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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
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第四章・龍使いの爺様 -2

これは、事あるごとに考えていたことだった。
神々は山をも動かす力があると伝えられているし、
実際そのような伝説も多く残っている。

この土地もその昔は山ばかりだったが、
海からやってきたデーダラボッチが最初に右足を下ろした場所だという。
その重みで平らにならされたところに山から人間達が下りてきたのだ。
アシワラノヤチノサトは、
確かに巨大な右の足跡の形をした土地の
ちょうど親指の付け根のあたりに位置している。
左の足跡は、南の山を越えた先にあり、
そこの土踏まずにあたる位置にはハニヤスノクボノサトがある。

大して高くはないとはいえ、
大人の足で丸二日かけてやっと越えてゆく山を
一跨ぎで越えてしまうほどの大きさと、
一踏みで山をつぶして平らにしてしまう力があったら、
小さな人間どもなどにかかずらわってないで
好きなように世界を作り変え、
自分達だけで暮らしたらいいじゃないかとサギリはいつも思っていたし、
ことあるごとにそう言ってもいた。

このワカサヒコとシナツヒコにしても川の神、風の神として、
川を溢れさすことも大風を起こして家々を吹き飛ばすことも
できると言われていた。
それが、いつもはこうしてサギリのまわりをちょろちょろして、
冗談なのか託宣なのかどちらともつかないような事を言うだけだ。

「実は我々にそんな力はないのです。言霊といえば、人間の言葉の方がよほど強いんですけどね」

「しかしまあ、人間は本気で言葉を発しようとしねえからな。世界と隔絶しようとする力が強すぎるんだ」

「サギリも本当は気をつけた方がいいんですよ」

「いずれ知ることにもなろうよ。サトを出るなら特にな」



[第四章・龍使いの爺様 -3]へ、つづく

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