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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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第六章・ナギとナミ -8

絞り出すような声で言って、
ナギとナミはサギリの前でがくりと膝をついた。

あわてて神棚に供えられた神木の枝を手にとって瓶の水に浸し、
それを二人の身体に叩き付ける。
細かい水滴が大量に飛び散った。
黒い霧は水滴から逃れるように、
一瞬ぱっと二人のまわりから離れるが、
またうぞうぞと寄り集まって
二人を半透明の繭のように包み込んでしまう。

「だめなの、どうしても」
「離れてくれない」

ナミの泣き声がなんだか遠くから聞こえるようだった。

サギリは目に力を込めて、ナミの下腹を透かし見た。
ネサクの葬式のときに聞いた、ナミの身体に宿ったという子供が、
この黒いものの大元なのではと思ったのだ。

しかし、そのまだあるかなしかの小さな命に邪悪な影は感じられず、
それどころか逆に白い光を放って
ナミとナギに黒い霧を近づけまいとしているように感じられた。

「この子を狙っているのよ、こいつらは」 

下腹を抱え込むようにうずくまって、ナミが呻いた。
そのナミをさらに守るようにナギが背中に腕を回している。

「狙っている?」 

そう、とうずくまったまま首だけもたげてナミが頷く。
ナミの動きに合わせてまわりを覆った黒い渦もまた動いた。



[第六章・ナギとナミ -9]へ、つづく

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「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
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