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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
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第六章・ナギとナミ -20

サギリにしては珍しく、その質問は口にするのが躊躇われた。

「だって、私のお腹にいるんだから、私の子でしょ? ねえ、ワカサヒコ。この子から、なにか別のものの気は感じる?」

「いや、私にはなにも… ナギとナミの子だと言われればそうかと思われる気しか感じませんが」

ナミにキッと睨まれて、ワカサヒコは口ごもりながら答えた。

「シナツヒコは!?」

今度はシナツヒコに向き直る。

「オレも」

確かにサギリが気持ちを集中して見ても、
ナミの中には、害のなさそうな白い光を放つ
小さな命の気が感じられるだけだった。
特に邪悪なものも、ましてやサトの外にいる
いたずら者の地霊達の気配もなかった。

「わかった…」

サギリは、人生で二番目に長い溜息を吐いて立ち上がった。

「解決しなければいけない問題がこれ以上増える前に、出掛けた方がいいかもしれませんね」

ワカサヒコがしれっとして言う。

「まずサトオサと長老達に相談してくるよ」

もう夜が明けようとしていた。
年寄りは朝が早いから、
サトオサと三人の長老達のうち一人くらいはもう起きているだろう。

木戸に手を掛けてからふと気付いて、サギリはナギとナミに振り返った。

「あんたたち、結界の張り方は知ってるよね。真似事じゃなく」

最後の一言はワカサヒコを睨みながら言う。

「毎朝ちゃんと結界は張り直すこと、あたしがいなくなった後は特に。そんで、家から出ない方がいいと思うよ」

さっき浄化したあの黒いぬめぬめした化け物が、
まだその辺りをうろうろしているような気がして、
サギリは戸を開けるのが少し怖かった。
それでも、もうサトオサがなんと言っても、
ヒルメを探しに行かなければならなかった。

「いや、サトの中ならもう大丈夫だろ」

「なんで?」

「あの黒いのは、ネサクの葬列が結界門を出たり入ったりしたときに紛れ込んだものと思われますから」

確かに人が死んだときは、
様々な得体の知れない気がサトの中を通り過ぎる。
人間の揺れ動く心がいろいろなモノを呼び込んでしまうのだ。
加えて、死体を納めた棺はサトの外にある西の山の洞に運ぶ決まりだ。
大勢の人間が結界門を通れば、それだけ結界の力も緩む。

だから、サギリはネサクの葬式の間の
ざわざわと落ち着かないサトの中の気の動きも、
そんなものだろうとあまり注意していなかったのだ。
それに、今まで葬式の時に悪い気が紛れ込んできたなどということは
聞いたことがなかった。

「だから、あいつはこの子を狙ってきたのよ。たまたま紛れ込んだんじゃないと思う」

なおも、ナミが言う。

「じゃあ、サイノカミにようく頼んでおかないとね」

念のため柏手をもう一度打ってから、サギリは木戸を開けた。
冷たい朝の空気が頬を撫でる。
青い朝霧が立ちこめる中、そうしてサギリは、
サトオサの家へサトを出る許しをもらいに行ったのだった。



[第七章・狐 -1]へ、つづく

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