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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

お知らせ
「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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第六章・ナギとナミ -16

二人の面倒を見ていたカヤノが三年前に病の床についた時、
家の中に子供が三人では看病ができないからと、
ナギとナミは別々の家へ預けられた。
もちろんどちらの家もサトの中にあり、
子供一人でも行き来できる距離しか離れていなかったが、
二人は預けられた当日から目に見えて弱っていった。
出された食事も食べはするが吐いてしまい、
夜も眠れずに泣き通しだったという。

最初は皆、引き離されたことに反抗しているんだろうとか、
慣れれば元気になるだろうとか、簡単に考えていた。
しかし、そんな状態が三日続き七日続きして、
ナギとナミは青白く痩せこけ目ばかり光って泣くことも
ついには起き上がることもできなくなった。

そうして二人は菰に包まれ、
それぞれの家の男達に抱えられて帰されてきたのだった。

「あの子達を、離してはいけない」 

もう長くは持たないだろうという苦しい息の下で、
カヤノは何度もそう言った。

預かりものだから、時が来るまでは」 

それがカヤノが生きているうちで最後の言葉だった。

死んでからもカヤノはナギとナミの世話をしに時折現れたが、
死んだ者には生きている者の言葉はよく聞こえないらしく、

「時が来るって、いつのこと?」

というサギリの問いにも、
いつもの変わらない笑顔が返ってきただけだった。


「ごめん、サギリ」

ナギが俯いたまま、小さな声で言った。

「この子を守りたいの」 

ナミの目から涙が溢れ出た。
首を巡らせて見るとナギの目にも同じように涙が溜まっている。



[第六章・ナギとナミ -17]へ、つづく

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「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
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