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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
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第八章・西のホラ -8

怖い。 

悪意も親しみも、なんの感情も映していない目は、
顔に開いた深い穴のようだった。
表情は動いていなかったが、
眉間と口元には深い皺が刻まれ、
引き結ばれた薄い唇は、
それが開くときには必ずや
呪詛の言葉を吐くだろうと思われた。
垂れ下がった両頬が小刻みに震えている。

怖い。 

守りの結界はまだ効いているようだったので、
その老女はサギリの身体に触れることはできないと、
頭ではわかっていたが、
サギリは本能的に身を守ろうと、
手に持った潰れた桃の実を老女に向かって投げつけていた

尻餅をついたままで、
恐怖にかられて闇雲に投げつけたそれは、
大きく目標を逸れ、老女の肩の向こうに飛んでいった。
老女は、相変わらずの無表情、無言で
スルスルと近付いてきていたが、
そのまったく変わらない表情のまま、
桃の実が飛んでいく軌跡に沿って、

ぐるんっ 

と首を廻した。
その仕掛け人形のような動きがまた不気味だった。
一拍遅れて、肩から下も

ぐるんっ 

と回転する。
もう手を伸ばせば届くところまで来ていた老女の着物の裾が、
サギリの鼻先をかすめた。
複雑な織り目の布地をたくさん使って
たっぷり襞を取った贅沢な着物だ。
アシワラノヤチノサトでは祭のときでさえ、
こんな着物を着る者はいない。

ぶわっとひるがえった布地からは、
甘いような煙いような、嗅いだことのない匂いが立ちのぼった。
その匂いをもっと嗅いでいたいような気がして、
思わず身を乗り出しそうになって、
やっとそんな場合ではないことにサギリは気づいた。



[第八章・西のホラ -9]へ、つづく

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