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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第八章・西のホラ -1

足元に繁る深い草の間を注意深く見ていくと、
草と木の根に半ば埋もれて、
黒い石が蹲っているのが見つかった。
その石を回り込んで、さらに細い道が
ほんの少し上りになって山へ向かって続いている。
その目印の石がなければ、絶対に見逃してしまう、
そんな踏み跡程度の道だ。

幾重にも低く繁る木の枝のおかげで、
雨に濡れることはほとんどなかったが、
雨だけでなく陽の光も遮られて、辺りは夕方のような暗さだった。

ここは、死者のための土地だ。 

アシワラノヤチノサトの者ならば誰でも、
死んだときには棺や瓶に入れられて、
この先の岩壁に口を開けている岩室に運び込まれる。
丈の低い灌木に隠された入口は、
人ひとりがやっと通れるくらいの幅しかないが、
続く細長い通路を少し歩くと、唐突に天井の高い広間が現れる。
そこにはどこからか淡い光も差し込んできていて、
数百年の間に運び込まれたサトビトたちの眠る入れ物が、
あるものは朽ち果て、あるものは苔むして
並べられ、積み重ねられている。

この岩室が、死者の眠る場所として使われる以前には、
サトで死んだ者達はみな、サトの真ん中の広場に埋められていた。
アシワラノヤチノサトを開いた数人の人間達のうち、
最初に死んだ者が中央に埋められ、
次に死んだ者からは、その中心から正確に円を描いて、
順番に埋められていった。
サトの子供はその上を駆けまわり、
大人も先祖達の上で酒盛りをした。
そうして、七つ目の同心円が閉じたとき、
これ以上の死者をこの広場に葬ることは無理だと
その時のサトオサが宣言した。
アシワラノヤチノサトが開かれてから三百年が経ち、
サトビトは千人を超えようとしていた頃だった。
折しも、その前の年に起こった地震で西の山の一郭が崩れ、
岩壁に洞窟が口を開けているのが発見されていた。
その洞窟の奥から奇妙な服装をしたマレビトと呼ばれる人間が現れ、
そのために発見されたとも言い伝えられている。

それが、西のホラの墓だ。

以降、サトで死んだ者は、西のホラの岩室に運ばれることになった。
かつての墓所だったサトの広場には、
今は大きな物見櫓が建てられ、
春と秋の祭の時には、
サトのみんながそのまわりに集まって祈りを捧げる。


サギリは、つい数日前には父親・ネサクの葬列と共にやってきた
この墓所の前に、程なくして辿り着いた。
西の山は、それほど深い山ではない。
山というよりも、大きな岩が平野の真ん中に
ごろんと転がっているような地形をしている。
見上げると、数日前には乾いて白っぽかった岩肌が、
今は雨に濡れ黒く光っていた。
辺りの空気がひんやりと冷たいのは、変わらない。

「いつ来てもなんか、気持ちの悪いとこだね」 



[第八章・西のホラ -2]へ、つづく

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