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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第七章・狐 -7

どこからかワカサヒコの声がする。

「こっちに入れ」

後ろから腕を取られて、
サギリは桃の実が作った三角形の中心に引っ張り込まれた。

はわずかに発光し三つが互いに光を投げ合って、
サギリの周りに薄い膜を巡らせていた。

「なに? これ。結界って?」

両手に鉈を構えたままのサギリは、
なにが起こったのかすぐに判断が付かなかった。
薄桃の膜を通して見る外側は、ぼんやりと揺らめいている。

「見ろ」

シナツヒコに示されて透かし見ると、
狐は当惑したように首を巡らせて
なにかを探す様子で辺りを見回していた。
サギリの方を見てもすぐに視線を逸らし、探し続けている。
桃の実の結界によって、
狐からはサギリの姿が見えなくなっているのだった。

それを見てようやくサギリは肩の力を抜いて、大きく息を吐いた。
鉈の柄を握りしめていた指は強張ってなかなか開かず、
やっと引き剥がすと指の間にべったりと赤黒い血が付いていた。
雨を手に受けて擦り落とす。

なかなかきれいに落ちなかった。

お世辞にも格好がよいとは言えない戦い方だった。
全く自分の思うとおりに動かなかった手足を、
サギリはひどく情けない思いで見下ろした。
これから旅を続けていくなら、
少しは武器の扱い方も覚えなければいけない。
でもどうやって覚えたらいいのか、
途方に暮れてサギリは溜め息を吐いた。

「いつまでもこうしてるわけにはいかないですよ」

「ずっとこの中にいるつもりか?」

ワカサヒコとシナツヒコの声に顔を上げると、
結界の外ではサギリの踏み散らした地面を狐がしつこく嗅ぎ回っていた。
サギリが斬りつけた前足からは血が流れ続けていたが、
傷を気にする様子はなかった。
舌のはみ出た口からは、白い泡が途切れずに滴り続けている。
金色の瞳は見開かれてまばたきもせず、
そこに知性の光を見て取ることはできなかった。

サトはずれの畑の辺りをうろついている狐達は、
もっと人なつこい賢そうな目をしていたはずだ。
今目の前にいる獣はまるで違う生き物のように見える。

「あれ、ほんとに狐?」

「姿はどう見ても狐ですね」

「ちーと呪われ気味ってとこだけどな」

なにに呪われているにしろ、
要するに正気を失っているということだ。
そんな状態の動物に知性を求めるのは無理というものだろう。

「あきらめてどっか行かないかな」

「狐は執念深いですからね」

「無理だろ」



[第七章・狐 -8]へ、つづく

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