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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第七章・狐 -15

勢いを付けて立ち上がったものの、外は相変わらずの雨だった。
このままの姿で出ていけば、十歩も行かないうちに
下着の中までずぶ濡れになるだろう。
現実の体を持たない神々というものの存在が、
サギリは心底うらやましかった。

「物質的に存在しないってことの悲哀も理解して欲しいものです」

さっき「知らないこともある」と白状して以来、
二人の物言いが少し気弱になったようでおかしかった。

サギリはまだ湿って冷たい着物の裾をつまんで、ぱたぱたと動かした。
今が夏で本当に良かった。
生地の薄い単衣の着物はもう端から乾き始めているし、
なにより絞ったままの濡れたものを着るなど、
冬なら凍えて動けなくなっているところだ。

虫除けになる染料で染めた糸でミツハが織ってくれた薄緑色の着物は、
歩きやすいようにと膝の上まで裾を詰めてあった。
まるで小さな子供の頃に戻ったようだと、
裾からにょっきりと伸びた脚を見てサギリは思った。
サトでは十歳を過ぎた娘は
ふくらはぎまでの丈の着物を着るのが普通だった。
娘組に入るようになれば、その下に腰巻きを付ける。
今、サギリの着物の下の胸と尻には
これも薬草を染み込ませた布がきつく巻いてあった。

脚に絡まって動きにくい腰巻きや丈の長い着物が
サギリは大嫌いだったから、
旅用にミツハが揃えてくれたこの装備はとても気に入った。
旅立ちの支度をしている時に

「サトで暮らしているときもこんな格好のままでいられたらいいのに」

とこぼして、

「まったく色気のねえことだな」

とシナツヒコにからかわれたのだった。

その裾から突き出している膝から脛に掛けては、
鹿の革がぐるぐると巻き付けてある。
足にはやはり鹿の革を縫った沓を履き、
これも上から革をきつく巻いてあった。
丈夫な革は、尖った岩やごつごつした木の根っこから
足を守ってくれるはずだ。
水も染み込みにくく、今のところ沓の中は乾いて快適だった。

その足を濡らさないように気を付けながら、
サギリは小屋の中を丹念に見て回った。
屋根や壁の破れ目から雨は容赦なく吹き込んで、
土間にはとうに小さな川ができていた。
さっき、狐の母子の幻が見えた片隅の、
かつては竈があったであろう場所には、
大きな水たまりができつつあった。

その上の壁に目をやって、サギリはほっと息をついた。

「これで、なんとなるんじゃん?」 



[第七章・狐 -16]へ、つづく

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