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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
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第七章・狐 -1

「ふむ」

サイノカミは頷いてにこにこと笑った。

「わかった。結界門は儂が今までより一層堅く守ることとしよう」

お願いします、と頭を下げたサギリに、
サイノカミは、しかしな、とつぶやいた。

「儂は、このサトができたときからこの場所にあって、ナカとソトの両方に目を配ってきたものじゃ。ソトから悪いものがやってくれば結界を強めてナカに入れぬようにし、ナカに悪いものができればソトに追い出し、そのようなやり方でずーっとこのサトを守ってきたんじゃ。
 しかしな、このところ、ソトの事がよく見えなくなりつつあっての。このアシワラノヤチの土地からこっち、東側のことであればまだ見通せるが、西の八つ山の向こうのこととなると濃い霧に閉ざされたようになっておる。霧の向こうになにか大きな影が見えるような気もするのじゃが、それがなんなのかまではわからぬ。千年の間ここでサトを守っていて初めてのことじゃ。
 ヒルメはその影の正体を知るために出掛けていったのじゃよ」

サイノカミは、遠く西の空に筋の浮いた細い首を巡らせた。
黒くうずくまる森の向こうには、
八つの峰を持つ山脈が薄い灰色の空に半ば溶けながら浮かんでいた。

「西に死、東に誕生、南に命。

 それぞれの役割を明確に持った神々に三方を守られた、

 このアシワラノヤチは、永遠に再生を約束された稀なる土地じゃ。

 千年の昔、デーダラボッチは

 なにを求めてこの土地に足跡を残したのじゃろうか。

 この土地から出たことのないお前が旅立つことで、

 この世界はなにか変わってゆくのかのう」
 

サイノカミの声は風の中に消えてゆき、
その姿もまわりの空気に溶けるように薄らいでいった。
サギリの手の中には燃やしたはずのヒトガタがあった。

「儂もそう意地が悪くはないよ。それは懐にでも入れて置くんじゃな」 

手の中の薄い紙がしゃべったように聞こえた。


夜明けとともに雨が降り始めた。
大粒の激しい雨だった。
西の空に薄く見えていた八つ山の稜線は疾うに消えてなくなり、
濃い緑に覆われた周囲の山々も色を無くしていた。

サギリは灰色のソトの世界に今、足を踏み出したのだった。



[第七章・狐 -2]へ、つづく

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