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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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序章・旅立ち -1

むかしむかしあるところに… 

ここではないどこか、今ではないいつか。 
今こことは遠く遠く、時と場所を隔てたところ。 
でも、どこかで繋がっている、そんな物語。 






夏の終わりの南風が空の上を渡っていく、ごおごおという音がしていた。
高い木々の梢が鳴っている。
月のない真っ黒な空に灰色の雲がうねうねと形を変えながら流れていた。

「サギリ、サギリよお」

「夜が明けてからにした方が、よかったのではないでしょうか」

腰に下げた鉈の重みを気にしながら、
サギリはサトの真ん中を貫く道を西へ歩いていた。
通り過ぎる家の戸は細く開けられて、
聞き耳をたてる人の気配が感じられる。

ようやく夜が明けようとしているその薄闇の霧に溶けかかって、
ワカサヒコシナツヒコがうるさく話しかけている。

「いってらっしゃーい、なんつって、皆に送られてさあ」

サトの掟を破り、ハチブとしてサトを追われる形で旅立つのだ。
サギリを見送る者はいないはずだった。

「死んでしまったネサクの言うことだからって、なにもハチブにまでなることはないと思いますよ」

「ネサクは生きてる間に言う暇がなかったってだけだろーがよ」

獣の革を三重に巻いた足はまだ痛くはなかったし、
身体も汚れていなかった。
夜が明けてどのような天気になるかで、
そのつらさも変わってくるだろうが、
今からそんなことを心配していてもしょうがない。

サギリのまわりを飛び跳ねてなにか言ってはゆらゆらと実体をなくし、
行く先に現れては近づいてくる、
この落ち着きのない二つの影のようなモノたちも
旅立ちの心細さをなくしていた。

心細いどころか、うるさい。かなりうるさい

「です」「ます」とキチキチした物言いのほうがワカサヒコ
巻き舌の乱暴な言葉遣いの方がシナツヒコだ。
サギリに見えている姿はどちらも十歳ほどの子供だが、彼らの実体は、
千年の長きに渡ってこの土地とここに住む人間たちを見守り続けてきた
神霊と言われている。
ワカサヒコは川の神、シナツヒコは風の神だ。
どちらもサギリが生まれた時からそばにいる、
守り神でもあり遊び相手でもあった。

「だいたい、幽霊の言うことで行動を左右されるなっていう戒めはですね、たとえば百年前に死んだ人の幽霊が出てきて、あそこに黄金を埋めた、とかなんとか言った時に、そのことで大騒ぎしないようにっていう意味なわけですよ。そんなことをいちいち本気にしてたら日常生活が成り立たないですからね」

「人間は自分達で作った決まり事の本来の意味を忘れがちだからな」

「後の世の学者のみなさんが苦労するわけですよ」

「ヒルメを探してやるんだって、威張って出てけばいいのによ」

「ハチブ扱いとはサトオサ達も融通が利かないことですねえ」

「例外を作ると後が大変ってことだろ」

…………………。 



[序章・旅立ち -2]へ、つづく

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個人で出版活動をしている[稀人舎](キジンシャ)と、申します。
「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
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