忍者ブログ

マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

お知らせ
「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

 ←ランキング参加しています。上位に食い込めたら、こいつも有名ブログの仲間入りっ!?
よろしくです。(涙目)

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「素戔鳴流離譚・其ノ二」第六章・アシワラノヤチノサト-12

緑のトンネルを抜けて、
やっぱり緑だらけの山裾の道をしばらく歩くと、
いきなり視界が開けた。

今度は正真正銘、開けた。

空が広い。
遮るものがない。
視界の三分の二くらいが青い空。
ありえねー青の空は、
地面に近づくにつれて薄白く霞んでいって、
その下に遠く、ちんまりした山々が連なっている。
広々した視界を真横に横切って川が流れてるみてーで、
木や草に隠れながら、
ところどころキラキラ光ってるのが見える。

そして、その川岸のあたりから
こっちの足下まで広がっている緑の絨毯、

これは、田んぼ?

稲だよな。
この緑のさわさわした植物たち。
高さ三十センチくらいに生えそろって、
一斉に風にそよいでる。
超日本的風景。

お箸の国の人だもの

……なんだけど、
俺が知ってる田んぼとはずいぶんと違ってるみてーだ。
まず、あぜ道ってもんがない。
水田でもない。
だーっとただただ広い地面に、
俺の知ってる水田とは比べものにならないくらいまばらに、
稲と思われる植物が生えている。
その間々には通路というか踏み分け道というか、
稲の生えてないところがあるだけだ。

でもま、まばらとはいえ、
これだけの面積でおんなじ植物が植わってるってことは、
やっぱ、ここは誰かが種を撒いて育ててるんでしょうなあ。
遠く、ぽつぽつと人影も見える。

「これって、田んぼ、だよね?」

親父がなんでツキミの名字を気にしてんのか、
そっちも気になるけど、
とりあえず、目の前の疑問が口から出る。
ああ、こうやって問題が先送りになっちゃうんだよなあ。
重要なことだったらどうしよう。
そしてそれは、たいがい重要なことなんだよな。
物語のお約束だよ。

「ここはまだ田んぼと言うても陸稲じゃからの。畑のようなもんじゃ。ただ、この土地はもともと湿地じゃったところだし、それにここには龍の一族がおるからのう。灌漑の設備がよそよりは整っとる。しかしまあ、わしらの知っとるあっちの世界の水田と比べたら、面積あたりの収穫高は十分の一か、それ以下じゃな。それでも、ここは他よりは実り多い土地と言われとるのう」

「ここって、なんてとこなん?」

トリカミノサトからは離れてるって、
さっきおふくろが言ってたよな。

「言うとらんかったか? ここはアシワラノヤチじゃ。今わしらが向かっとるのはアシワラノヤチノサトというての、あのサギリの家のあるサトじゃな」

あ、そういえばそんなん言ってたな。
サギリはアシワラノヤチノサトから来たって。

クソ生意気・超ポジティブシンキング魔法妹キャラ・サギリ。

つい二日前のことなのに、なんか懐かしいっすね。
一緒に山で遭難しかかったり、龍神対決したりして、
生死を共にくぐり抜けた仲だもんな。

「サギリ、どうしてんの?」

「トリカミノサトで元気にしとるよ。あれこれ手伝って重宝されとる。あの子はいいのう。場を和ませる力を持っとる」

うん。なにしろ超ポジティブシンキングだから。

「ジヌミは?」

サギリの従兄弟であり、同時に俺の腹違いの弟くん。
見かけ超絶美少女ながら、
剣を使わせたら強ええのなんのっていう素敵少年だ。

「ん? ああ、やつも元気じゃよ。テナヅチに気に入られての……」

ジヌミのことを言うとき、
親父はちろーりと上目遣いにおふくろの方を窺うように見た。

俺は見逃しませんでしたよっ。

そりゃそうだよねー。
ジヌミは親父のこっちの現地妻との間の息子だもんなー。
気まずいよねー。
ねーお父さんー。

「おまえ、ジヌミのこと、お母さんに話したのか?」

こそこそ。

「話したよ、当然」

ひそひそ。

「どこまで」

ぼそぼそ。

「全部」

「…………そうか」



「素戔鳴流離譚・其ノ二」第六章・アシワラノヤチノサト-13 へ、つづく

↓1日1回ポチッとよろしく。励みになりますです。
PR
この記事にコメントする







  Vodafone絵文字入力用パレット表示ボタン i-mode絵文字入力用パレット表示ボタン Ezweb絵文字入力用パレット表示ボタン

この記事へのトラックバック




ごあいさつ
稀人舎ロゴ
個人で出版活動をしている[稀人舎](キジンシャ)と、申します。
「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
好評なものは、「引き出し」から出して、本にすることもあるかもしれません。

ここに公開している創作物の著作権・出版権等の権利は、その作品の著者にあるものとします。
無断転用はおやめください。
なにかにご紹介いただけるときなどは、
[稀人舎]まで、ご連絡ください。
よろしくお願いします。
あ、リンクはフリーでございます。何卒よろしくお願いいたします。
最新コメント
[04/28 ゆっきー]
[11/18 管理人]
[11/17 ちあき]
[02/15 管理人]
[02/15 ちあき]
稀人舎の本
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
シングルマザーとシングルファーザーの結婚は、問題山積みで… 家族も自分たちも幸せになるために、彼らが取った方法は…?

飲んだくれてふる里
飲んだくれてふる里
山形県鶴岡市の思い出エッセイ集。鶴岡の飲み屋で拾った、ちょっと懐かしい話がいっぱいです。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
アクセス解析

AdminControlMenu: AdminMenu | NewEntry | EditComment | EditTrackback

忍者ブログ [PR]