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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」第六章・アシワラノヤチノサト-1

「お、親父い?」

声がひっくり返っちったよ。
で、身体がひっくり返ってんのは親父の方だ。
地べたにへたり込んだまま、
俺の右足首のとこをつかみやがってますよ。
このせいで俺は転んじまったんじゃねえかー。
んもうー。
しかもしかも、急いでるのにー。

「なにやってんだよ、こんなとこでー」

あ、これは今はいいや。話が長くなるとやだからね。

「俺、急いでんだよ。人、追っかけてんだ。見失うとヤバいんだ。放してくれよ」

早口で言う。
俺だっていつもいつも
しどろもどろしてるわけじゃありませんよ。
言いたいことがあるときは、言うんだよ。
早くしねえとツキミのやつがどっか行っちまうよ。
親父の事情は後でゆっくり聞くからさ。
あー、でも連絡先聞いとかないと、
後でとか言っててまたどこにいんのか
わかんなくなったら困るなー。
でも、こっちの世界、イズモノクニでの連絡方法ってなに?
狼煙? 矢文? 伝書鳩?
ああ、ケータイって便利ですね。ホント。
現実的なのは伝言か、やっぱ。
俺が知ってるイズモノクニの場所っていったら、
あそこしかねえじゃん。

「あのさ、俺が1時間とか2時間とかで戻んなくって、親父がここで待ってられなくなったら、トリカミノサトになんかことづてしといてよ。俺、なんとかしてあそこ行くからさ。今はわりぃ。急いでんだ。んじゃ……」

「待てというのに。わからんやつじゃのう」

「早くしねえと、あいつに逃げられちゃうじゃんかよっ。待ってらんねえっての!」

「おまえが追いかけとるのは、さっきわしを突き飛ばしていった、あの子供か?」

子供って……。

まあ、親父から見たらツキミは子供だろうけどさ。
そうじゃないよな。
今の言葉はそういうニュア〜ンスじゃないよな。

「子供ってか、俺といっこしか違わねえんだけど、女だよ」

「ほお、てっきり小学生くらいのガキかと思ったぞ。出会い頭にわしを突き飛ばしよって、挨拶もせんと走っていきよった。まったく最近の子供はなっちょらんな。親の顔が見たいもんじゃ」

だから、その子供じゃないってば。
それに親の顔は見たくとも、
もう見られないみたいですよ、ツキミの場合。

「そんなんどうでもいいよ。んじゃ……」

「いいから待て」

んもう〜〜。

「大丈夫じゃ。あれだけ強い気を持っておれば、どこにいるかすぐにわかる」

まあ、気は強いみたいですけどね。
そんなんわかるんですか?
それって「あいつの霊圧を感じる」みたいなもん?

「わかんの? 親父」

「おまえ、わからんのか」

むか。
わかりませんよ。そんな霊圧なんて。
俺人間だもん。

「普通の人間は似たり寄ったりじゃから、区別がつかんがの。わしやおまえのような、バケモノ退治ができるような者の気は、他とは違うじゃろ」

違うじゃろって言われてもねえ。
ジャロってなんじゃろ。



「素戔鳴流離譚・其ノ二」第六章・アシワラノヤチノサト-2 へ、つづく

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