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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」第五章・書斎、そして墓場-25

「ツキミ!」

うわんうわん〜。

ああ、自分の声がうるさい。
こんなにうるさいんだから、
ツキミにも絶対聞こえてるはずなのに、なんの返事もない。
まあ、待てと言われて待つ泥棒はいねえからな。

トンネルを抜けると、そこは雪国……
じゃなくて、池だった。
それもヨーロッパ風?のまわりを石で組んだ池、あれだ。
ローマでショートカットの王女様が
後ろ向きにコイン投げたとこ。そんな感じ。
まわりは狭い。
このダンジョンの最初の、高木家之墓の下の穴くらいかね?
ただし壁はコンクリじゃなく岩。
俺から見て正面に開いている出口らしき穴から
薄明るい光が射してきてて、あたりを照らしてる。

池の縁の石から出口までは、これも石組みの階段が七段。
そこがはっきりと濡れて黒く光っていた。
間違いないよな。ツキミが通った跡ですよ。
これで、この先にツキミがいなかったら、なんの罠だよって話だよ。
石に手をかけてよいしょと身体を持ち上げる。
ザバッと、さっきと同じ音が岩壁に反響した。

階段の先の出口は泣きたいくらいに狭くて、
俺は地面に手と膝をついてハイハイしないと通れなかった。
水をくぐったあとにこんなんで、
俺の服はもうどうなってんのか、見るのも嫌です。
前回は最後に豪雨に遭ってドロドロだったけど、
今回は最初からドロドロかよ。どーなんだこれ。
ざらざらになった手は、ズボンにこすっちゃいました。
お母さんごめんなさい。

苦労して通り抜けた先は、いきなり視界が開けた。
といっても外じゃない。
なんだこれ。体育館?
いやもっと広いか。武道館くらい?
東京ドームほどじゃないけど、とにかく広いドーム状の、
またしても岩の部屋だった。

俺が穴から出て来たところは、
ちょっとしたステージみたいに高くなってるとこで、
そのドームの中が見渡せた。

……ここは、墓場?

俺が立ってるステージの上には、
ちょうど人がひとり入ってそうな大きさの壷やら、棺やらが並べられてるし、
下の方、いわゆるアリーナは、碁盤の目に仕切られて、そこにも壷や棺が並んでる。
墓から入ったから、出口も墓ですか。
つじつまが合ってるっての? なんか感心。

ステージから降りる階段の上に立って見渡すと、
アリーナのちょうど真ん中へんをちょこまか走る姿が見えた。

「ツーキーミー!」

やっと追いついたぜ。っていっても
こっから百メートルくらいはあるか?
俺は五段ある石の階段を一気に飛び降りて、走った。
濡れた服が邪魔で走りにくーい。
スニーカーの中もがっぽんがっぽんで、気持ち悪ー。
しかも、上から見たら整然と並んでるように見えたお棺やら壷やらは、
ところどころはみ出してるものあり、古くて崩れてるものありで、
通路を塞いでる。
そんなんを飛び越し迂回し、たまには踏んづけ……
どこのどなたか存じませんが、すんませんすんません。
心の中で拝みながら、走る。

なかなか距離の縮まないツキミは、
俺らの出て来たとこの反対側の壁に開いた
洞窟みてーなとこに向かってるらしい。
まーたダンジョンかよ。もう勘弁ですよー。

「待てよツキミ、おいったら!」

俺の必死の呼びかけも無視して走るツキミ。
なんなんだよあいつはよー。
一体ナニモノ?
ただのミトちゃんの幼なじみの女子大生じゃなかったってこと?
普通の人はイズモノクニに来たりはできないはずだもんなあ。
前の祠では、俺には見えてた向こうの景色を
ミトちゃんは「真っ暗ですわ〜」って言ってたし……
って、あん時ツキミも「真っ暗や」って言ってなかったか?
確か言ってた。
それって、見えてたのに見えないってウソついてたってこと?
なんのために?
俺を騙すため?
これまたなんのため?
だいたいなんでそうまでしてツキミはイズモノクニに来なきゃならんかったのか?

ああもう、疑問だらけで気持ち悪い。
ツーキーミー、怒らないからわけを聞かせてクダサイーー。
チガエシノタマが必要なんだったら貸してあげてもいいから、
それを持ってこっちに来なきゃなんなかった、その理由を聞かせてー。
おながい。

俺の心の叫びもむなしく、
ツキミはぽっかりあいた洞窟に走り込んでいった。
百メートルの差がほとんど縮まらないまま、俺も飛び込む。
今度は普通に立って歩けるくらいの高さと広さがある通路で助かったよ。
また行き先の見えない真っ暗通路だったらどうしようかと思ったけど、
少し登りになった通路のほんの先には、
おそらく外への明るい出口が開いていた。
お日様に照らされた緑がキラキラ光ってる。

うわーい、お外だー!

そのまま飛び出そうとして、
俺はなにかに足を取られてスッ転んだ。
とっさに受け身をとったけど、勢いででんぐり返し一回転だ。
腕擦りむいちゃったよ。いててて。

なんかにつまずいたってより、なんかが足を引っ張ったような?
そんな感じ?
振り向いてみるとそこには、
岩壁に寄りかかるようにして、ひとりの人がうずくまっていた。

「スサノオじゃな? ちょっと待て」

親父だった。



「素戔鳴流離譚・其ノ二」第六章・アシワラノヤチノサト-1 へ、つづく

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