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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」第三章・帰京-5

「イチコさん。スサノオです。えと、喉は大丈夫ですか? あの、お返事しなくてもいいんで、ちょっと聞いてください」

部屋の中からはなんの物音もしない。
イチコさんはもしかして、そこにはいないんじゃないのか、
またアマテラスに取り憑かれて意識を失ってるんじゃないのかとか、
いろいろ考えて不安になっちゃって、
扉蹴破って確かめたい気持ちになるけど、
そこはこらえて、必要なことだけしゃべることにする。

「俺、東京に帰ったらすぐに、そのアマテラスのいる世界に行く方法を調べて、なるべく早くあっちに行くようにしますから、もし、またイチコさんがアマテラスに取り憑かれるようなことがあって、そんで、なんとかしてイチコさんの意思をあいつに伝えることができるんなら、スサノオは自分でそっちに行くからって、だからもうイチコさんに取り憑いても無駄だって、言ってやってください。あ、無理だったら無理しなくてもいいですからね。俺はゆうべ、イチコさんに言った約束をなんとか守るためにがんばりますから、……待っててください」

部屋の中で、コトリ、とかすかな音がした、ような気がした。
イチコさんが扉一枚の向こうで息を詰めている、そんな感じ。
もしかしたら違うかもだけど。
でも、俺はそれでいいと思うことにした。

「……あの」

俺が言いたいことだけ言って、扉の前から離れようとしたときに、
向こう側から小さな声がした。びっくり。

「は、はいはいはいはい。なななななんでしょう〜」

せっかくさっきはかっこよく決めたと思ったのに、
このざまですよ。ちっ。

「あの、あたしのためなんかに、無理しないでください……」

ああ、こういう人なんだ、イチコさんは。
自分のことを「なんか」とか言っちゃう、そんな性格。
だからあんな悪意の固まりみてーな
わけわからんばあさんに取り憑かれちゃうんですよー。
でも、今それを責めてもしょうがないんだよね。ああ。

「ああああ、あのですね。俺自身も狙われてるわけですし、どっちにしろイズモノクニには行かないといけないみたいですから、イチコさんのためだけってわけじゃないんですよ。俺のこともイチコさんのことも、どっちもうまいこといったらいいなっていうか、うまくいかせたいなっていう、そんな意味ですよ。だから心配ご無用なんですよ」

陽の届かない薄暗い廊下の扉の前で、
両手振り回してなにやってんだ俺。
言ってることもなんかしどろもどもだ。
でもでも、この扉の向こうにはイチコさんがいる。
あの、寂しい笑顔を残していったイチコさんがいるんだよっ。

「あの、ですから、イチコさんは、さっきの伝言をもしできたらアマテラスってのに伝えるのだけやってみてください。あ、でも、それで怖いことになりそうだったら、無理にやらなくていいですからね」

「はい……」

ため息みたいな声だった。
それきり、扉の向こう側からはなんの音もしなくなった。

「じゃ」

俺はそれだけ言うと、そうっと扉から離れた。



「素戔鳴流離譚・其ノ二」第三章・帰京-6 へ、つづく

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