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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」第三章・帰京-17

駅の改札の前には、十人ほどの人が列を作っていた。
小さい駅だから、電車が来るたびに改札を開ける方式だ。
俺とミトちゃんが列に並んですぐに、ツキミがやってきた。

「おじさま、どうだった?」

「うん、元気やったで。お菓子ばっかし食いたがるーて、病院の人が怒ってはった」

俺にはもう隠すこともないと思っているのかどうかわかんないけど、
声をひそめることもなく、ミトちゃんとそんなことを話してる。
俺は、なんて言ったらいいかわかんなかったから、なにも言わなかった。

特急到着のアナウンスがあって、改札が開いた。
俺はミトちゃんに改めていろいろな意味を込めたお礼と、
お父さんとお母さんへよろしくという
通り一遍のことを言って改札へ向かった。
ツキミもミトちゃんに「そんじゃ」とかなんとか言ってる。

「ツキちゃん」

俺の後ろから改札を通ろうとしているツキミに、ミトちゃんが声をかけた。

「ひとりで、大丈夫?」

??

いつもほんわかやらかいしゃべり方のミトちゃんの、
思いがけず切羽詰まったような口調にぎょっとして、
俺も一緒に振り返ってしまう。
それに、ミトちゃんがツキミに「大丈夫?」なんて、
今までの俺だったら「台詞、逆じゃん?」とか思うとこだろうけど、
さっきのツキミの事情を聞いた今は、
ちょっとふたりの関係というか、
気持ちというかが垣間見えた気がして、複雑だった。
ミトちゃんは優しいからなー。

「夏休みの間だけやろ。だいじょぶだいじょぶ、一ヶ月くらい、なんてことあらへん」

ツキミはことさらに(って、俺には思える)大声で言って、
手を振って歩き出した。
ぼけっと突っ立ったままの俺にぶつかりそうになって、
「ちっ」と舌打ちも忘れない。

これはどうにかならんのですかね?
事情を知った今でも、事態はどうにもならないし、
できないって、どうしたらいいんでしょうか……。

困りながら乗った特急は混んでいた。
ツキミは俺とは違う乗車口からさっさと乗っちゃって、
どこ行ったかわかんなくなった。
「あんたとお手々つないで東京帰るって言うてるんやないで」って言ってたもんな。
当然ですかそうですか。
二両分を歩いてやっとひとつ見つけた空席に座ったけど、
座ったとたん、向こうからいかにもなおばあさんが
でっかい荷物をかかえてヨチヨチ歩いてくるのを目撃しちゃって、
斜め前の子供らに向けた
「そこのチビッコ、席ゆずれー!」
という俺のテレパシーは通じないみたいだったんで、
俺はそのおばあさんに席をゆずって立ち上がった。
「すいませんねすいませんね」
というおばあさんの声を後ろに聞きながら、通路を歩く。

一時間くらい立ってってもなんてことないんだよね、
と立つことに決定してデッキに出ると、
そこには、相変わらずの怒り顔のツキミがいた。

もうひと車両向こうのデッキに行こうかどうしようか迷っていると、
ツキミから声をかけてきた。



「素戔鳴流離譚・其ノ二」第三章・帰京-18 へ、つづく

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