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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第四章・彼女のお宅訪問 -1

ミトちゃんに話を聞いたその日のうちにでも
行く──と叫んだ俺だったが、

「試験が終わらへんかったら行けへんやろ。
うちら真面目な女子大生なんやで」

という、ツキミのお言葉(拳つき)で、
真面目に全科目の試験を受けた後に、俺らは新幹線に乗った。

今日から楽しい夏休み~。

俺ら?
そう。俺と、ミトちゃんと、ツキミ。

「なんで、おまえまで一緒なんだよっ」
「うちの実家は、ミトんちのお隣さんなんや」

……ま、そんなこったろうと思ってましたよ。
ミトちゃんと二人っきりで新幹線なんて、このツキミが許すはずねーし。

「ん? でもおまえって大阪なんじゃねえの?
これから行くミトちゃんちって……」

「そう、ツキちゃんは、高二の時に転校してきたのよね~。大阪から~」

「大阪離れてから、まだ三年っかたってへんから、 
うち、全然関西弁が抜けへんのや」 

「ふ~ん……」

「なんやのっ!?」

「別にー」

「感じ悪いわー。この男」

最近わかってきたんだけど、
どーもこいつってば、
無理して関西弁しゃべってるようなとこがあるんだよな。
ときどきイントネーションおかしいし。

三年前まで大阪にいたのは本当なんだろうけどさ。
でも、高校生くらいの若者がですよ、
三年も違う土地で暮らしたら、方言なんて、
少しは抜けてくもんなんじゃないのかね?
しかもこの情報化社会。テレビだってネットだってあるんですぜ?

大学に入って初めて上京してきたっていう同級生のやつなんか、
半年くらいですっかり東京弁になってたよ。
今じゃ「~っちゃってさあ」とか言ってるよ。ふつーに。
お笑い芸人キャラで、わざと関西弁使ってるやつとかはいるけどな。
それなんか、ネタとしてって感じだし。
講義で指された時なんか、綺麗な標準語で答えてたもんな。

どーもツキミの場合、強がってるように聞こえるんだよ。
ほら、関西弁て悪口に最適だから。

そう考えると、憎ったらしい毒舌も、
なーんか余裕で聞き流せるようになった気がしますよ。うへへへへ
ま、今はやりのツンデレキャラってことですか?
今のところツンツンしてばっかで、デレの方は見たことないけどな。
見たいような見たくないような。

あ──んななっちゃったり、こ──んななっちゃったり……
ふへへへへへ。

「なんだよ、気味悪いやっちゃな。ニヤニヤすなや、スサノオ」 

「その名前で呼ぶなっ」

前言撤回。余裕なし。

「スサノオ」

「呼ぶな」

「スサノオー」

「呼ぶなー」

「スサノオッ」

「呼ぶなッ」

「高木っ」

「呼ぶなっ」

え? あ、しまったー。

「うふふふふ。ツキちゃんと高木さんて、おもしろいわねえ。 
テレビのお笑い見てるみたい~。息ぴったりねえ~」 

「ぴったりじゃ、ねえ!」

「ぴったりじゃ、ねえ!」

あれ? ハモッちまったじゃねーか。くっそー。

「うふふふふふふ」

でも、ま、ツキミが一緒だろうがなんだろうが、
ミトちゃんとだってずーっと一緒だからね。
一泊だけの予定だけど、もー、今日と明日はずーっと一緒。
なんならこのままずーとず──っと一緒でもいんだよ~、俺は。

ああ幸せ。ああ安心。

外を出歩いてるってのに、
朝からずっと一日中バケモノの気配も感じないなんて、
母親のそばを離れなかったガキの頃以来じゃあーりませんか?
アホみたいに場違いなところでかしわ手打って、
白い目で見られることもない。
いつバケモノに襲われるかって、ビクビクしなくてもいい。
ビバ、真っ白体質。ビバ、ミトちゃん。ビバビバ~。

そういえば、あの「スーサーノ──オ────」っての、
あれ以来聞こえないな。
いや、耳に残る声だったから、
なんか聞こえてるような気もするんだけど、
幻聴のような気もって、そんな感じ。

「もしまた名前を呼ばれても無視してくださいね。
どうしても無視できなかったら、勝手になんかしようとしないで、
私たちのことを呼んでください。わかりましたね」

なんつって、ワカサヒコは念を押してたけど、何事もない。
こうなると、あのヘンな世界に一瞬行ったことだって、
ホントにあったことなんだろうかって気になってきちゃうしー。
俺の錯覚? 夢? 幻覚? とかとか。
やっぱ俺ってビョーキ? お医者さんに行った方がいい?
考え始めるとやめられないとまらない。

「だ───! もう、うっとうしいやつだな、んっとーに!
とりあえずそのミトってやつのうちに行って、
そこになにがあるか見てから考えりゃあいいだろが!
もうおまえはなんも考えるな!」

パキーン。

家ではシナツヒコにはたかれ、学校ではツキミにぶっ飛ばされる俺。
でも、こういうぶっ飛ばされ役のやつのことって、
主人公の女の子が秘かに好きだったりすんだよな。
ラブコメとかではさー。
もちろん、この場合の主人公はミトちゃんきぼんぬ。
なにせ、これから俺はお父上に会いに行くわけだしー。
それも向こうから「会ってほしい」って、言ってきて、だよ?
もちろん今回は全然別の用事なわけだけどさ。
これを機会にお父上と仲良くなって、

「おお、なんとよい青年なんだ~。
ぜひうちのミトと一緒になってくれ~」とかなんとか……。

うひひひひひひひ……。

「はがっっ!」

なんにも言わずに黙って心の中で妄想していただけのはずなのに、
なぜか飛んでくるツキミの鉄拳。

「なにすんだよっ」

「やらしいこと考えとる場合やないで」

「なんでわかんだよっ!
おまえは超人ロックかっ!? ゼロゼロワンかっ!」

「やっぱ、やらしいこと考えとったんや」

ニヤリ……。しまった。

「ミトのことやなくて、自分のオトウハンのことでも考えとき。 
そのために行くんやろが」 

「はい」

親父のことを考えるっていったってなー。
一体なにから取りかかったらいいのやら。

しかし、「見つけた。もうひとつの入り口だ」って……。
手掛かりなのか? これ。
わかりやすすぎ、説明的すぎだろ。
しかも入り口の話をワカサヒコから聞いたばっかでさ。
なんかご都合主義じゃなーい? いいんか? そんなことで。

そんでもって「もうひとつの」って。
他にも入り口があるんですか?
どこに?
なんの伏線ですかね?

そいで、入り口見つけて
親父はそこからあっちの世界に行っちゃったってこと?

で、七年間帰ってこない、と。

なんで?

ちゃんとした入り口から行けば、帰ってこれるんでしょ?
ご丁寧に「息子が訪ねてくる」とか、
思わせぶりな予言まで残しやがって。
てことは、帰るつもりはなかったってことか? ああ──ん?

俺が腹が立つのはそこだよっ!

帰るつもりがない旅に出るってんなら、 
ひとことそう言っとけや、ゴルァ!! 

後に残された俺が、
どんな気持ちでこの七年間過ごしてきたと思ってやがんだよっ!
明日は帰ってくんのか、あさっては帰るのか、とか毎日毎日、
もう~~~~~!!
おふくろはあの調子だから、どう思ってんのかよくわかりませんけどね。
少なくとも俺は、いろいろいろいろ考えちゃったりしてたんですよっっ!

特に最近はね。なんだかもう、襲ってくるバケモノ倒してばっかで、
こんな人生どうしたらいいのかとか、
なんかこう~、もっと根源的な解決方法があるんじゃないだろうかとか!

もう~、考えても考えても肝心の親父が
いなくなりっぱなしなもんだから、わかんないんですよ。

どーしてくれるんだ。

俺の青春の七年間を返せ。

「だから、考えるからいかんのじゃ。 
性格とはいえ、いつまでたってもわからんやつじゃのう」 

昔から親父にはよくそう言われましたけどね。
考えるなったって、無理でしょ。普通。こんな状況で。

俺は普通の人なんだよっ。バケモノが見えるって以外はなー……。

だいたいさー、行方不明七年なんだから、
裁判所に届けたら死亡扱いになるんだよ。
それもどうしたもんかなーとかさ。
長男にしてたった一人の息子としては、考えちゃうわけじゃん。悪い?

ま、あのおふくろは、「帰ってくるわよ~」ってなもんだけどさ。

おふくろといえば、今回の俺の旅行のことをもう、
言いつくろうのも説明すんのも面倒なんで、

「なんか、あっちの世界に行ける入り口があるってゆーんで、
ちょっと行ってくるね。親父のこともわかるかもしんないしー」

って、朝めし食いながら言ったんだけどさ。したら、その返事が、

「あらホント? 行ってらっしゃい。気を付けてね」

だもんよ。お友たちのアックンちに遊びに行くってんじゃねえっての。

謎だ。

わかってんのかね。ホントに。なにを?
どっからどこまで?

謎だ。

「あっちの世界って知ってんの?」とか
「親父があっちに行ってるって知ってたの?」とか
「お母さんは行ったことあんの?」とかとか、
聞きたいことは山ほどあったけど、
俺自身がよくわかんないことなもんだから、
どう聞いたらいいのか、逆に質問されたらどう説明したらいいのか、
ぐるんぐるんしてるうちにぐったり疲れちゃってどうでもよくなって、
黙って出てきちゃったよ。

帰ったらちゃんとお話しようと思いマス。
待っててね、オカアサン。

あー、でもあのおふくろのことだ。
俺がこのまま帰れなくなって、十年後くらいに家に帰ったとしても

「あら、お帰りなさーい。遅かったのねえ」

とか言うんだろうなあ………。

………え?

なんか、今、すっごく怖い考えになったような気がするんですけど──。

コノママカエッテコレナクナッテ……。

ちょっと、これは……、さすがに考えるのはやめとこう。
うん、そうしよう。


[第四章・彼女のお宅訪問 -2]へ、つづく

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