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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第八章・トリカミノサト -9

「おまえたち、やめろっ! 
 やめろ! 引けっ!
 引け───っ!!」

サトオサの大音声が響いて、やっとじいさんたちの大乱闘がおさまった。
全員ぜいぜい肩で息をしている。

ダメじゃん。

サギリももちゃもちゃの中でもまれて、
ほっぺたとおでこに擦り傷を作っていた。
そのくらいはいい薬じゃ! 
少しは反省しろっ! 

……しないだろうなあ。はあ。 

俺のシャツはボタンが二個ほど行方不明になり、
右肩のところの縫い目がほつれ、
さっきビリッと音がしたポケットは、
見るも無惨にベロンチョと胸から垂れさがっていた。

そこから落ちた山姥の錦が、足元にピラッと広がっている。
誰かに踏まれて土まみれだったけど、
でもその派手な模様は、あたりの風景の中で妙に目立っていた。

「あーあ、もう。なんでこんなことになるんだよ」

山姥の錦を拾いあげて、パンパンと土を払う。

「大事にするがよいぞ」って言われたからね。
無理やりポケットに突っ込まれたまま、持ってたことも忘れてたけどさ。

「それは、その錦は、あなたのものでしょうか?」

サトオサが、なんだか遠慮がちに声をかけてきた。
おや~? なんか話ができそうな感じかも?

「そですよ」

向こうの出方がわからないので、答はこれだけ。
サギリが続けてなんか言おうとしたけど、今度こそ足を蹴って黙らせた。

「いってーなー! なにすんだよっ」

「おまえ、ちょっと黙ってろ。このありさま見ろよ。おまえのその口のせいなんだかんなっ!」

サギリの口がこれ以上ないってくらいに尖ったけれども、
さすがにもうしゃべらなかった。
そうそう、ちょっとそこでおとなしくしててください。

「それは、もしや山姥の錦ではありませんか?」


 
山姥の奥様をご存知ですか? 

う──ん、ここはやっぱり正直者モードを貫いた方がいいんだろうなあ。
てかそれしかできないんですけどね、俺。
サトオサ、なにが目的なのかいまいちわからないから不気味。

「そうですよ。山姥の奥様にもらったんです」

正直に、でも、答は最小限に。

「では、あなたはカムナギ様ということですね? 山姥と話ができて、錦をもらうことができるということは……」

あ、そうきましたか。ゆうべのサギリの話だと、
こっちの世界では、神様が見えたりバケモノと戦えたりする人は
カムナギって呼ばれてるってことだったよな。
俺も、それと同じ体質なんだから、
こっちではカムナギっつってもいいんだろうか。
てか、いろいろややこしい説明して話が長くなるよか、
そっちの方が手っ取り早いか。

横目でサギリを見ると、口は尖ったままだけど、
俺に向かってうんうんとうなずいていた。

「そうです。俺と、このサギリはカムナギなんです」

俺だけカムナギだと思われると、ボロが出そうだったからね。
それにサトオサは「カムナギ様」と言った。
「様」付けってことは、そう悪い感情を持ってるわけじゃなさそうだし。

「本当ですか? 本当なら、その証拠を見せていただけるとありがたいんですが……」

う──ん、疑り深いなあ。
この山姥の錦が証拠にはならないってんですかい? 
まあでも、そうか。
ただの人がそこらで拾ったものかもしれないしな。

しかしなー。
カムナギの証拠ったってなー。
バケモノ倒すったって、普通の人には見えないし……。

「いいですよ」

俺がうーんうーんと悩んでいると、サギリがあっさりそう言って、
さっきの武装じいさんたちの群れに近づいていった。

おいっ! 
またなんかすんじゃねえだろな!


「おい、サギリ」



[第八章・トリカミノサト -10]へ、つづく

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