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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第五章・扉の向こう -6

ひんやりした穴の中に比べると、外は蒸し暑かった。
むっとする草いきれが身体にまとわりつく、そんな感じ。
湿気が多いのかもしれない。

穴の前には若い木が二本生えていて、外に出て振り返ってみると、
丁度、岩穴の目隠しのようになっていた。
誰かが穴を隠すためにわざわざそこに植えたみたいだ。

う──ん……。そうなのか? もしかして親父の仕業? そうかもな。

見あげると、そこにもやはり湧き水に濡れた岩壁がそびえていて、
頂上は見えない。
でも、暗い感じはしない。
葉っぱの間から陽が射しているせいもあるけど、
なんというか、全体に明るい。

ふ──ん……。
あっちの世界っても、山の中に関しては特に変わったとこはないみたいですなー。
草の葉が蛇の頭になってるとか、木が逆さまに生えてるとか、
地面がピンク色とか、そんなことはなく、ごく普通の山の中だ。

さて。この山をおりてみるか否か……。

一本しかない下りの道を上からのぞき込んで迷っていると、
そいつは唐突にやってきた。

うなじの毛が逆立って、頭のてっぺんに向けてゾゾゾゾと鳥肌が立つ。

う、わ──。忘れてたよっっ!

ミトちゃんから離れたんだから、 
結界張らないといけなかったのに────! 

振り向くと、岩壁の上の方からお馴染み巨大まっくろくろすけが、
ぐお──っとおりてくるところだった。

もう、行き先がどうなってるかなんて確かめる余裕もなく、
下り坂を駆けおりる。
山の中の踏み跡って感じの細い道は、
気をつけてないと道じゃないところに踏み込んでしまいそうだ。

でもでも、そんなの気にしてらんないし────!

ぐごげごぎぎぎぎーっと、後ろからはバケモノ特有のうなり声が聞こえてくる。
世界が違っても、バケモノの声は共通なのね。
見た目も、殺気も、そして、俺が襲われ体質なのも。

うえ──ん。

転がるようにして坂道を駆けおりていくと、すぐに右への曲がり角になった。

この道をおりると、こっちの世界のミトちゃんちが、あるのか?

しかし、曲がった道は石段ではなくて、
それまでよりは、ちょっとは広く道らしくなったものの、
ごろ石と土の山道のままだった。
全速力で駆けおりるにはグラグラの石段じゃない方がよかったのかも、
とか思いながらまだまだ走る。
坂道で加速がついて、俺の足は、
本来の能力以上の早さでもって回転していた。

転ぶ、転ぶ、
うわ───!! 転ぶ────!


山道の終わりがやっと見えた、と思ったところで気がゆるんだのか、
もはや力の限界だったのか、俺の足はついにもつれた。
がくんと膝が折れて、身体が前に投げ出される。

くるんと世界が回転して、俺はとっさに両手を突き出して、
頭が地面に激突するのを防いだ。
下手なでんぐりがえしをしたような格好で背中から落ちて、一瞬息が止まる。
それでも勢いは止まらず、俺は尻で石ころだらけの坂道を滑りおりていった。

いで、いで、いでででで……。

転んだ俺の頭の上を、バケモノがごが──っと通り過ぎていく。

ああ、そのままイスカンダルの彼方まで(以下同)。

坂道がようやく終わって、俺の尻もやっと火を噴くような痛みから解放される。
あたりは神社の境内ではなく、山の中と同じ雑木林の中だった。

見渡す限り、緑だらけ……。

いや、ここで呆然としてる場合じゃない。
顔をあげると、前方三メートルの空中で、
ぬめぬめした黒いカタマリが、おっとっとと方向転換しているところだった。

間に合わね──っ!




[第五章・扉の向こう -7]へ、つづく

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