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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第五章・扉の向こう -4

俺は最初、でかい鏡が扉の中にぴったりおさまっているのかと思った。

扉の向こうには狭い岩穴が続いていて、
その先にぽっかりと開いた出口からは
数本の木の幹と鬱蒼と茂った下草が見えた。
チラチラと木漏れ日が地面に当たっている。

しかし、鏡なら映っているはずの俺の顔も、
後ろのミトちゃんやツキミの姿も、そこにはない。
念のため振り返って、ミトちゃんとツキミが、
俺のまだすぐ後ろにいることを確認する。

……てことは、向こう側も洞窟になっていて、
そこに見えてるそれが、あっちの世界ってことですか。

なんか。安直じゃないすかね?
普通、あっちの世界とこっちの世界の通路ってったら、
公園の女子トイレで溺れてぐるんぐるんのスターツアーズとか、
ウサギの穴におっこちてずんずんおっこちておっこちてとか、
空が割れてホロウがこんにちは、とかとか。

少しは道程とか仕掛けとかってもんが、あるんじゃないですかね?

それが、すぐそこ。こっちの世界から見えてるし。

う───ん。
誰か、俺のことを騙そうとしてませんか──?

他の人のご意見も聞いてみようと俺が口を開くより先に、
後ろでミトちゃんの声がした。

「真っ暗だわ~。中になにかあるのかしらねえ~」

へ?

「……そやな。真っ暗や」

一拍遅れて、ツキミも同じことを言う。
見えない……んですか? みなさま。
あの洞窟の出口が、あの緑の木陰が。

「ちょっと、お父さん~。懐中電灯、貸してくださる~?」

ミトちゃんは、穴の外に立っているお父さんから灯りを受け取り、
手を伸ばして扉の中を照らしてみている。

ああん、俺の脇腹に、ミトちゃんのフクフクの腕が~。

「なにも、見えませんわね~」

「……せやな」

……ああ。わかりました。
あくまでも俺にひとりで行け、と。そういうことでございますね。
ま、ちょーっと様子を見て、すぐに戻ってくればいいんだし。

「ちょっと、俺、中調べてみるから……」

「え? あ、行くんか?」

「大丈夫かしら~? 落とし穴、なんてことはないかしら~?」

う──ん。落とし穴はここからは見えないなあ。俺には。
普通に、土の地面がありますよ。すぐそこに。
こっから手を伸ばしても、さわれます。ぺたぺたと。

「じゃあ、これ持って行かれるといいわ~」

ミトちゃんがでかい懐中電灯を渡そうとすると、穴の外からお父さんが、

「狭いとこに持っていくんなら、こっちの方がいいんじゃないか?」

と言って、細身の懐中電灯を渡してくれた。
ジーンズの尻ポケットにも入る、小さいやつだ。
災害用持ち出し袋とかによく入ってるような、
小さいけど光量が結構あって明るいってゆー最新型。
すげー、お父さん。

でも、これ、必要ないみたいですけどー。
あっちはすごく明るいですよ。昼間みたいだしー。

断ろうと思ったけど、他の人たちには真っ暗に見えている
扉の中に入ろうとしているわけなのだから、
ここは受け取らないとヘンに思われるか、
とかぐるぐる考えて「あ、はあ、すいません」とかなんとか、
もごもご言って受け取った。

中腰で扉をくぐろうとして頭をぶつけ、
結局四つんばいになった。かっこわる。

別に扉をくぐっても、
このまえ無理矢理連れてかれたときみたいに空間が歪むとか、
ゲロゲロとか、そんな感じは全然なく、
今までいたのとまったく同じような岩穴の中に、俺は中腰で立っていた。




[第五章・扉の向こう -5]へ、つづく

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