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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第五章・扉の向こう -3

「ここは開けちゃならんと、
親父に子供の頃からきつく言われてまして。
まあ迷信と言われてしまえばそうなんですが、
開けると神隠しに遭うぞと脅かされてましてな。
それに、どうも、その、ここは私には気味の悪いところで……」

ちょっと恥ずかしそうに、もじもじと言い訳をする。
いや、賢明だと思います。お父さん。

「そうねえ。わたしもここにはひとりで来ちゃいけないって、
よく言われたわね~」

そのとおりだと思います。ミトちゃん。

しっかし、わかりやすすぎ。

古い神社の裏山にある、もともとのご神体。
開かずの扉。
開けると神隠し。
でもって、ここに来ると言って、そのまま行方不明の親父……。

わかりました。わかりましたよっ!

ここが、あっちの世界に行く入り口ってことなんですねっ! オトウサン。

ここから入ってみろ、と。
俺はここから入ったんだぞ、と。

不吉でも、不気味でも、暗くても狭くても、
俺はここを開けてみなくちゃならんのだろうなあ。
そして、くそ親父はその向こうにいるんだろうなあ。

なあ、シナツヒコ? ワカサヒコ?

木の枝にひっかかった洗濯物みたいに、そこらでフワフワしている、
わが守護霊たちを見あげる。
二人はそろって、うんうんとうなずいていた。

そ。んじゃ、行こうか……。

「あ、俺ら、行けないから」

え? なんですって?

「私たちは、あっちの世界には行けないのです。
説明すると長くなりますので省略しますが、
私たちは物質的には存在しないので、
そういうモノは、行ったり来たりはできないものなのです」

なに──?
そんな設定聞いてませんよ。

んじゃひとりで行けってか?

「そうだな」
「設定は設定ですから」

がく。

あ、ミトちゃん。ミトちゃんと一緒ってのは、ダメ、かな?

「なあに~?」

小首をかしげて、かわいくミトちゃんが言う。

……ああ。こんなかわいいミトちゃんを、どんなところかもわからない、
危険かもしれない世界に連れていくなんて、できない。
俺がどんなことからでも守ってやれるかってったら、
そんなんわかんないし。
ああ、情けない。

「なあなあ、開けてみぃひんの?」

ツキミ。

こいつは守ってやらなくてもいいぞ。
もしかしたら俺より強いかも、だし。
でもなあ。あっちの世界じゃあ、どんな強さが要求されるのか、
それがわかんないんだよな。
腕力だったらツキミでもオッケーだろうけど、
バケモノ退治の方面だったら役に立たないだろうしなあ……。
こいつがお荷物になることを考えたら、ぞっとするなー。

ま、ちょこっと様子を見てきて、それから考えるか……。
ちゃんとした入り口だからか、道返しの玉のおかげなのかわからんけど、
またここに帰ってこれるんでやしょ?

「あの、これ、開けてみてもいいでしょうか?」

お父さんに一応許可を求めてみる。
だって、開けちゃならんて言い伝えなんでしょ?
俺は礼儀正しい青年なんですよ。

高木スサノオ、高木スサノオを、婿候補に、ぜひよろしくっ。

「ああ、もう、そのために来たんだから。
開けてみなさい、開けてみなさい」

ちょっと興奮ぎみらしいお父さんの許可を得て、
俺は腰をかがめて狭い岩穴にもぐり込んだ。
うしろからお父さんが、懐中電灯の光を当ててくれた。

扉の前に膝をついて、御神酒徳利を脇にどける。
ジーンズの生地を通して、じんわり湿り気が膝に伝わる。
ああ、ジーンズも泥だらけになるのですね。
高かったんすよ。リーバイスのビンテージもの。

「壁に扉が、そのまんまくっついてるみたいやな」

耳元で声がして飛びあがる。
振り返るとツキミとミトちゃんも、穴の中に入ってきていた。

ぎゅうぎゅう。

「おあっ!
なにやってんだよ。おまえら」


「だって、興味あるやんか」

「わたしも~、ひとりで開けてみる勇気はありませんけど、 
いい機会ですから~」

くそ。こっちは結構、決死の覚悟だってのにー。

興味本位かよっ!

「はよ、開けてみぃよ」

うるせー。言われなくとも開けますよ。
知らないよ。

開けた途端、ビュ──ッとかゴ──ッとかいって、
なんかに巻き込まれて吸い込まれて、どっかに行っちゃうとかなっても。
もしくは魔人加藤が出てきちゃうとか。
もちろん嶋田久作バージョンで。

「ちょっと、離れてて。なにか出てくるかもしんないし。
どうなってるのか、わかんないから」

優しい俺。ま、今のは主に、ミトちゃんに言ったんですけどね。

表面がちょっと湿っているけど、どこも腐ったり壊れたりはしていない、
意外としっかりした扉に手をかける。
シャツの中の道返しの玉が揺れて、コツンと胸に当たった。

つかみにくい、小さな取っ手をつまんで、観音開きの扉を手前に開く。

……ギ──…。

お約束の不気味な音が岩壁に反響した。

……………??




[第五章・扉の向こう -4]へ、つづく

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