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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第五章・扉の向こう -2

小さな洞窟だ。

高さは一メートルちょっとくらい。
腰をかがめてやっと入れるかって、大きさ。
中は暗く、どうなってるのか外からはわからない。

「この中に、その祠が?」

ここに入るの、いやだなあ。すっごく、いやだなあ……。

昔、家の納戸に閉じ込められたときのことを思い出してしまった。
あの幽霊屋敷の納戸には灯りがついてないのですよ、今でも。
オカアサーン、出してよー。ごめんなさいごめんなさい。
もうしませんからー。オカアサーン。

なにをして怒られたのかは覚えていない……。ダメじゃん。

「この奥なんですか?」

「そうですよ。祠は、ほら……」

お父さんが、持ってきたでかい懐中電灯を点けて、洞窟の中に向ける。
中が明るく照らされると、拍子抜けするほど近くに、
木でできた小さなお堂のようなものが現れた。

なんだよー。
洞窟ってより岩穴?
もしかしたら人が掘ったものかもしれない。
それくらい穴は、小さくて浅かった。
奥行き二メートルってとこかなー。ちょっとひと安心。

その奥の壁にぴったりはまるような格好で、木の扉がおさまっている。
よく田舎の道ばたにある、お地蔵さんが入っているお堂みたいな形だ。
扉は閉じていて、その前の、お地蔵さんなんかだと
お賽銭箱やお供えなんかが置いてあるような場所には、
白幣が刺さった御神酒徳利が置いてある。

白幣の白が、懐中電灯の光を反射してまぶしかった。

「ここも、なんかの神様を祀ってあるんですか?」

お父さんに聞いてみた。だって御神酒が供えてあるもんよ。

「たぶん」

心許なげにお父さんが答える。
たぶんてなに? たぶんって。

「以前にうちが火事になったときに
古い書き付けなんかが全部燃えてしまったもんで、もうわからんのですが、
もしかしたら、うちの神社の、
もともとのご神体だったんじゃないかと思うんですわ。
私のじいさんも父親も、毎月決まった日に、ここに参ってたんで。
なんで、私も月にいっぺんは掃除して、
てきとーな祝詞をあげてるんですわー」

てきとーなって……。

ああ、古文書が燃えてしまったので、わからないのですね。

「中にはなにが入ってるんですか? ご神体って、鏡とか?」

「じつは、私は開けてみたことはないんです」

は?




[第五章・扉の向こう -3]へ、つづく

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