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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
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第五章・扉の向こう -1

神社の本殿のうしろは、すぐに裏山の雑木林になっていて、
その中に一本の石段が、なかば草に埋もれて伸びていた。

さっき登ってきた石段よりもさらに古く細くて、ぼろい。
人ひとりが登るのがやっとの幅で、斜めになったり、
ところどころグラグラしていて、
この石がない方がかえって登りやすいんじゃないだろうか。
完成したばかりの時は、立派なぺかっとした石段だったのかなあ?
最初からこんなんだったってこたないよな。
いつなのか知らないけど、
この石積みあげた人たちはなに考えて石段作ったんでしょうね。

お父さん、俺、ミトちゃん、ツキミの順で一列になって登る。
お母さんは「いえ、いえ、私は留守番、留守番よ~」と家に残った。
残って正解です、お母さん。この坂は、つらいっす。
息があがったころに、やっと石段の途切れ目が見えて、
やったー!と思ったら、そこから道は、ほぼ直角に左に曲がって、
さらに上に続いていた。

「ま、まだ、です、かー?」

弱音を吐いてしまいました。はあはあ。

「ここ、登ったところですよ」

お父さん、息乱れてないよ。さすが小学校の先生。

曲がったところから石段はなくなって、ごろ石と湿った土の山道になった。
ところどころに、崩れ防止の材木が埋めてある。
またこれが、苔が生えてたりしてて不用意に足を乗せると滑るんだな。
何度かずりっと転びそうになって、「大丈夫ですか~?」と、
ミトちゃんに声をかけられる始末。

かっこわりぃ。

道の両側は、林というより、もはや森。
どこか遠くで、ジーッと蝉の声がしてる。夏なんだよなあ、今。
でも、ここは全然暑くない。むしろ寒いかも。
足元の草には露がおりていて、スニーカーが湿ってきた。

この旅行のために買ったおニューなのにー。
白が茶色になるのも、時間の問題だ。ああ。

恥も外聞もなくハアハア言いながらたどり着いたそこは、
四人の人間が立って、いっぱいいっぱいの場所だった。

右にも左にも、もう道はなく、正面には巨大な岩壁がそびえている。
見あげてもまわりの高い木の枝に隠れて、頂上は見えない。
どこか上の方で水が湧いているのか、岩肌を薄く水が流れ落ちている。

なんか不吉だ。不吉すぎる……。 
まわりは暗いし。 

そして、その不吉の元凶が、岩壁の下にぽっかり口を開いている。



[第五章・扉の向こう -2」へ、つづく

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このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
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