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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第二章・あっちの世界?-2

俺様十九歳。
まだまだヤリたいこととかヤリたいこととかヤリたいこととか
いっぱいあるんですよっっ!

しかも、お呼びがかかるって、死んじゃうにしても、
普通そんなのわかんないんじゃないの?
死ぬ前には、うらめしや~な声で名前呼ばれるって、
それってみんな経験すること?

ねえ? それ普通?

「だーかーらー、おめえは普通じゃないんだって、
何度言ったらわかんだよっ!」

パキーン。

いつもの痛みが俺をパニックから救ってくれた。
ビバ、日常。
普通じゃなくともこれが俺の日常。

「あの、ですね。あっちの世界っていうのは、
龍吉が説明していたと思うんですが、覚えていませんか?」

覚えていませんかって、言われてもねえ。
親父は失踪七年目だよ。
親父がいた頃は、俺、小学生だったんですよ、いじめられっ子の……。

「この世界は一枚の紙の上に存在しているようなもんなんじゃ。今、目に見えている世界は紙の片面に過ぎんということじゃな。ということは、紙のもう片側というものも存在するわけじゃ。それを、まあ仮にあっちの世界、と儂は言っているんじゃがな」

あー、なんか言ってたかも。
思い出した! 俺って、あったまいー!

でも、これって観念的にこの世界のあり方を説明するために
親父が作った、例え話だったんじゃねえの?
この世界も目に見えるものだけで
成り立っているわけじゃないんですよっていう、
なんつうか、普通の人には見えない黒いのや白いのの気配や、
バケモノが見えちゃうことの
説明をつけて、俺に納得させるためにさ。

だから、この話を聞いた時、
「こっちの世界」ってのは普通の人が見ている普通の世界で、
「あっちの世界」ってのは、
その裏側にある気配やらバケモノやらが充満している世界で、
普通は目に見えないものなんだけど
紙一重でこっちと繋がっているものなんだよと、
で、その紙の向こうが見えちゃうのが俺らなんだよと、
そんな風に親父は言ってるもんだと俺は理解していたんだけれども……。

「違います」

きっぱり否定。

「おまえ、小学生だったくせに、
龍吉の話をそんな抽象的なとこに、よく持ってったな」

うん、俺神童だったから。
昔神童、今普通の人。

「そんな、難しい例え話じゃないですよ。
龍吉は言葉通りのことを言っただけです。
あっちの世界は本当にあります」

紙の裏側に? この世界は一枚の紙の上に存在?
思わず足元を見る。
紙ぺら一枚の上に土が乗ってコンクリが乗って俺がいる……
そう思うとなんだか急に地面が頼りなく思えてきた。

「だからー、そこんとこは例え話なんだよっ。わかんねえやつだな」

「でもまあ、一枚の紙の裏表っていうのは言い得て妙ですよ。あっちとこっちと、描いてある絵はまったく違っているのに、寄って立つところは同じだから、こっちで土台が歪んだらあっちでも歪みが生じますし。あっちから穴を開ければ、こっちにも穴が開くと、相互に影響し合っているという点で紙の裏表なんですよ。しかも、板でも布でも岩でもなく紙というところも、一見、かたそうに見えてもほんの少しの力を加えるだけで折れたり曲がったり破けたりともろいとか、一回破損したら元に戻すのが簡単にはいかない、とかいう点でも共通の特性でもってうまく言い表していると思います」

う──ん……。

「あのさ、それって、要するにパラレルワールドってこと?」

四次元世界、異次元世界、多次元世界……なんとでも呼んでください。
今までどっちかというとオカルト風味の俺のまわりだったけど、
SFな要素までからんできちゃったよ。
どうしよう。

「あっちとかこっちとかそっちとか、
世界がいっぱいあるとかいうこと?」

恐る恐る聞いてみる。パラレルワールドものは正直苦手だ。
頭こんがらがる。
そんでもって、それぞれにちょっとずつ違う自分がいたりすんのな。
そっちの俺とこっちの俺がごっつんこで核爆発が、とかさー。

あーやだやだ。

「いや、今んとこ、あっちとこっちの二つだけだ」
「だから、裏表に例えたんでしょうね、龍吉も。
そしてちなみに存在してる人間はそれぞれ別です」

ああ、よかった。
二つだけなら、まだ把握できる。
もう一人の俺がいるとかもなくてよかった。
要するに行ったり来たりしても問題ないってことなのね。

ん? 行ったり来たり?

「で、なんで、あっちの世界から俺が呼ばれないといけないのよ」

やっと自分の聞きたいことを的確に言うことができた気がした。
まあ、「あっちの世界」つうのがホントにあると仮定しての話だけどな。
仮定しないと話が進まないし。
普通の人は、「あっちの世界」なんて信じないだろうけどさ。

なんか、でも、俺の中の大切なものをなにか手放したような気がする、
そんな夏の日。

「お前に用があるんだろ、誰か」

がく。

シナツヒコのお言葉に俺が脱力したちょうどその時、
あたりの校舎からは二限目が終わった音が聞こえてきた。

教室のドアを開け閉めする音、
椅子を引きずる音、
階段を駆けあがる駆けおりる音、
「あー」「わー」「きゃー」「おー」「うー」「けー」
言葉の聞き取れない声。
急に世界に色がついて動き出したような、
そんな物音たちがまわりにあふれる。

すぐ近くの校舎の出入り口からぞろぞろと人が出てくるのを見て、
俺は、上斜め四十五度の角度にあがっていた自分の顎を
下方向十度の角度に修正した。
また「アブねー」とか言われちゃヤダからね。

そんでもって、ゆっくりと歩き出す。

(誰かって誰だよ。俺はあっちの世界に知り合いなんていねーよ)

声には出さずに質問する。
どうせこいつら、俺の心ん中を勝手に読んで
あーだこーだ言ってくるんだ。
同じことだ。

「あっちの誰かにスサノオの存在が
知れてしまったということでしょうね」
「今までどうにか隠してたんだがな。なんかあったんかな?」

顔をあげなくとも、二人がフワフワついてくるのが気配でわかる。

で、今なんつった?
俺の存在が知れてしまった?
今まで隠してた?
俺って有名人?

知りませんでしたよ。今の今まで十九年間。

容姿十人並み。身長百七十六センチ。体重六十五キロ。成績中の上。性格おとなしめ。特に引っ込み思案てことはないけど少なくとも自分から笑いを取りに行ったりはしない、そんな性格。今まで付き合ったガールフレンドは二人。もう振られたけど。「高木くんて、なんかつまんないー」とか言って俺の元から去っていったユイとリナ。くっそー今に見てろよ。ぜってー後悔させちゃるからなっ。

そんなこんなで普通でしょ?
どこにでもいる十九歳男子ですよ俺。
他の人には見えないバケモノが見えるってこと以外は。

「その見えるっていう力に、目をつけられたんですよ。そんな能力持ってる人間はあっちにもそうそういませんから、いろいろ活用したがる人はいるんです」
「あっちはこっちより、オカルト的要素が強いしな。おまえのその珍し能力は、活用のしがいがあるってこったろ」

あ、そう。

あっちの世界ってのは、バケモノを見る能力なんてみんな持ってて
特別でもなんでもなく、俺はそもそもあっちの世界の人間で、
こっちでは普通じゃなくともあっちでは普通で、
この度俺はかぐや姫みたく
本来の世界の人にお迎えに来てもらっちゃった王子様……


とかそんなストーリーを今〇・〇五秒の間に組み立ててたんですが、
違いましたか。

がっくり。

王子様じゃない俺は、
授業が終わって晴れ晴れした顔の人々とすれ違いながら、
校舎の入り口を入った。明るい外から急に薄暗い屋内で、
一瞬目が見えなくなる。
ゆら…と足元がふらついた気がして、
またあっちの世界とやらに行っちゃったかとひやっとしたけど、
目が慣れるとそこはいつもの校舎内の階段だった。

「さっき、あっちに引きずり込まれた時に
結界のトナエゴトを唱えましたね」

唱えたよ? それがなにか?

ピータイル貼りのいかにも学校の階段て感じの階段を登りながら、
頭の上に浮いているやつらと会話する。
声に出さずに。

普通じゃないよな。ホント。

「それであっちの誰かさんは、おめーのことを補足できたんだな。あっちからこっちの世界なんてそうそう見えるもんじゃねえから、おめーの声と力の波動をさがして、今朝からずっと名前を呼んでたんじゃねーか?」

「こっちから引き戻すのも、スサノオの声が頼りでしたからね」

「『俺になんか用?』って間抜けな声が聞こえなかったら、見つけらんなかったしな」

間抜けで悪うございましたねっ。

でもさー、あっちの世界の誰かさんが俺になんか用があるんなら、
あのままあっちの世界にいて、
会って用件聞いてきてもよかったんじゃねーの?
どんな用件か知んないけど。

それともなにか?
あれって、敵? 悪者?

ま、「うらめしや~」だしな。
でもさ、悪者かもしんないけどさ。
話聞かないことには始まらないっしょ。

「あっちの世界にはちゃんとした入り口から入らないと、
帰ってこれなくなりますよ」
「無理矢理連れ込まれたら、呼んだやつに取り込まれて言いなりだな」

えー? 言いなりはやだな。
で、ちゃんとした入り口? そんなんあんの?

「ありますよ」

どこに。

「わかりません」

あ、そう。

…………。

おー、まー、えー、らー、な───!

ええ加減にせえよっ!!
えらそうなことばっか言っておいて、
肝心なとこは「わかりません」じゃあよっ。
どうしようもねえじゃねえかっ。

「ただ、手掛かりは」

手掛かりがあるなら早く言えっ!

「龍吉、だな」

親父?
七年間行方不明の親父のなにが手掛かりなんだよ。
またわけわかんねえこと言ってっと承知しねえ。

「どうも、龍吉もあっちの世界に行ってしまっているようなんです……」

な、に────い!?


[第三章・俺の女神ちゃん-1]へ、つづく

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