忍者ブログ

マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

お知らせ
「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

 ←ランキング参加しています。上位に食い込めたら、こいつも有名ブログの仲間入りっ!?
よろしくです。(涙目)

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第三章・俺の女神ちゃん -2

「へぶしっ!」

あと三センチでミトちゃんに手が届こうかって地点で、
俺は真横からの強引な力の作用によって吹っ飛ばされた。
勢い余って隣の列の椅子に頭から突っ込む。

どがじゃがどげっ!!

「なにすんだっ おま…」

「ミトに、さわんなやっ」

俺の声と重なったのは、かわいいミトちゃんとは正反対の、
凄みのきいた低い声だ。

「何回言うたらわかるんや。この男、あったま悪いんちゃうか?」

関西弁て、なんかむかつく。悪口に最適。

「ツキちゃん~、暴力はいけないわよ~」

そうだそうだ。ミトちゃんの言うとおりだ。

「この男にはな、身体に言わな、わからへんのや」

椅子の上に倒れ込んだ俺を思いっきり見おろす位置で、
腰に手を当てたポーズをとって立ちはだかっているのは、
浅黒い肌をした小柄な女だ。
大きな杏型の釣りあがった目がちょい印象的。

名前は、海原月美(うなばらつきみ)

ミトちゃんの同級生だ。
高校から一緒らしい。

ミトちゃんあるところにツキミあり、
ってくらいに二人はいつも一緒にいる。

そして、俺がミトちゃんに近づくのをことごとく邪魔しやがる。

俺がミトちゃんにダイブ!
…で、ツキミが俺を吹っ飛ばす……。

この三ヵ月間、会うたびに毎回毎回飽きずに繰り返されるパターンだ。
もはやお約束。
だんだん吹っ飛ばす力が強くなってきてるように感じるのは気のせいか。

いや、気のせいじゃない。

「おまえ、なー。毎回毎回、邪魔すんじゃねえよっ」

椅子の背にぶつけた鼻がツーンと痛い。
えーと、鼻血出てねえだろうな。鼻血出てたらカッコ悪いからね。
俺は鼻血が出てないことを確かめてから立ちあがり、
ツキミに詰め寄った。いっくらこいつの態度がでかくても、
身長では俺の勝ちだ。

ほら、俺の顎までも届かねーじゃねーか。
チービチービ。ざまーみろ。

「がぐげっ!!」

思いっきり顎に頭突きを食らわされて、
俺はまたまた椅子に倒れ込んだ。
ったくよー。この暴力女。

「ミトはうちの大事なダチなんや。
あんたみたいな、チャラチャラした男に渡すわけにはいかんのや」


チャラチャラってなんだよっ。
チャラチャラって!
俺のどこが、チャラチャラなんですかっ!?

そりゃあちょっと、見た目いい男かもしれませんがね。
ふっ。
地方出身の田舎娘には、それがまぶしく見えるのかもしれないけどさ。
やーね田舎者ってさー。
東京モンだったら、みんなチャラ男とか思ってんじゃねーの?

だっせ──。

きっとあれだ。
田舎のオトウサンなんかに
「東京モンには気ぃ付けろ。騙されんじゃねえだべよー」
とかなんとか吹き込まれて上京してきたってクチだ。
おめーみてーなションベン臭い田舎娘なんて、こっちから願い下げだね。おならプーだ。

「頭ん中がダダ漏れだわ、あんた。
そういうとこが、チャラチャラしてるっていうねんで。
こっちこそ、おならプーのビチグソゲリーや

まあ、お下品。

「まあまあ二人とも~。喧嘩しないでこっちで一緒に座りましょうよ~」

ほら、ミトちゃんの優しーい上品な言葉遣いを、
友達だってんなら少しは見習えよっ!

俺とツキミはうぎーっとにらみ合いながらも、
ミトちゃんになだめられておとなしく席に着いた。
ミトちゃんを真ん中に挟んであっちとこっちだ。つーん。

この、ミトちゃんになだめられて喧嘩がおさまるのも、
いつものお約束。
ミトちゃん、ごめんね。

ミトちゃんの白い横顔をうっとり眺める。
ああ落ち着く。
ああ安心。
ミトちゃんの発する白い光の中で、俺は幸せー。
そのやーらかそーなほっぺに、ちょーっと触らしてもらえたらなー。

ぷにっとなー……。

「さ、わ、る、な」

向こう側から、黒い顔がにらんでる。
あー、はいはい。わかりましたよ。
おまえはミトちゃんのお目付役ってわけね。
しっかし、なんでそんなに……。
いくら高校からの親友だからって、やりすぎなんじゃねーの?
もしかして百合の人?
ええー?
でも片思いだろ。そうだよね、ねーミトちゃん?

「お、高木。まーた三人一緒か。両手に花でイーネ!」
「こんちゃ。あいかわらず仲いいねー」

教室に入ってきた顔見知りが、声をかけてくる。
次々とイーネイーネ言ってくるけどな、
おまえら陰でなに言ってるか俺は知ってっぞ。

「高木も物好き」
「黒と白のどっちが目当てなんだか」
「俺だったら黒の方だけど」
「高木は白の方らしい」
「へぇへぇへぇへぇ~~」

黒と白ってのは、ツキミとミトちゃんのことだ。
もっとあからさまに「チビデブコンビ」って言ってるやつもいる。

そう、チビはツキミ。
デブはミトちゃんだ。

ツキミは一見「南の島の人デスカー?」ってくらい色黒の肌をしていて、
目がでかい。
俺なんか、初めてぶっ飛ばされたときには、
「日本語通じるか? こいつ」って思ったくらいだ。
背はミニモニ並。
手足も細くてやせているから、本当の子供みたいな体型だ。
目の大きい顔はまあまあ整っていて、かわいい方なんじゃないかね?
俺は好みじゃないけどさ。あ、聞いてませんかそうですか。

入学当初はその南方系のかわいい顔に、
そこそこファンもいたらしいけど、
あの関西弁で繰り出される毒舌と、
ところかまわぬ電光石火の拳と蹴りで、
「なに、あの女」という世間の評価が固まるのに、
一ヵ月とかからなかった。

考えてみれば、ツキミの毒舌と暴力は、対俺限定じゃないんだよな。
ミトちゃんと、そしてツキミ自身にちょっかいを出してくる、
男にも女にも、誰であろうと容赦しない。
学部の事務所のおっさんをぶっ飛ばした話は有名だ。
なんでぶっ飛ばしたかは聞きたくないから聞かなかった。
聞かなくてもだいたいわかるし。

そんなわけで次第に誰もツキミとミトちゃんには構わなくなり、
唯一ミトちゃん大好きの俺が、
いまだにぶっ飛ばされ続けてるってわけだ。

ミトちゃんはツキミとは正反対に色白で、どこもかしこもプックプクだ。
身長は百六十センチくらいだけど、体重はたぶん俺より重い。
ほんのり桜色のほっぺは、まあるくふくらんでいて、
笑うと目が糸のように細くなる。
腕には赤ちゃんのようなくびれ皺が入り、
手の甲にはえくぼが並んでいる。

ああ、かわいい。

ツキミがそばに四六時中貼りついていなければ、
ミトちゃんはみんなに好かれる存在なんじゃないかと思うんだ。
恋愛対象じゃーないかもしれないけど。

だって、性格がいいんだもん。

誰もがなごむ、そのおっとりゆったりした口調で、
決して人のことを悪く言わないし、
いつも物事をいい方にいい方に考えようとする。究極の楽観主義者だ。

ツキミのことを
「ったくムカツク、あのツキミダンゴ」
とか聞こえよがしに悪く言うのが聞こえても、
「まあ、ツキちゃんたら、
もうみんなに顔と名前を覚えてもらったのね~。よかったわね~」
だし、
自分自身が「デブ」と言われても、
「そーなのよ~。わたしったら、なに食べてもお肉になっちゃうの~~」
と、ニコニコしてる。

ああ、かわいい。俺は顔も結構かわいいと思ってるけど、
性格がかわいいんだよ。
ほんとーに。
みんなきっと心の底ではミトちゃんのことを
「結構イイやつ?」
とか思ってるに違いないんだ。
ツキミのことが怖くて、近寄れないだけなんだ、きっとそうだ。

俺にはしかし、毎度毎度のツキミのぶっ飛ばしをくらっても
補って余りある、ミトちゃんの白い光が見えてるからね。

子供並みのチビの暴力なんか怖くありませんよーってんだ。

ミトちゃんの発する光の中で、すっかり安心しきった一時間を過ごし、
フランス語なんかちーとも頭に入らないまま、三限目は終了。

ジュヌセパフランセー。

四限目の俺の講義は日本文学概論。
一年生は大講堂で生物だって。
あーあれはいいね。出席さえ足りてれば、単位くれるからね。
でもこれで、ミトちゃんとは離ればなれ。
ああ離れがたい。俺も大講堂、行っちゃおうかしら……。

「あの、高木さん。
四限目終わった後って、なにかご予定ありますかしら?」

え?

ミトちゃんが俺のご予定を聞いてくるなんて初めてですよ。
どういう風の吹きまわし?
じゃなくてー。

この三ヵ月の俺の努力が実ったってことですねっ!
やっとやっと俺の良さをわかってくれたと、そういうことですねっ!

「ないないないですっ!
なんのご予定もないですったらない!
楽しい家庭を作りましょう! ミトちゃん」

ミトちゃんのプクプクの手を両手で握る。
すかさずツキミのデコピンが飛んできたけど、
そんなのにひるむ俺ではなーい!

「うふふ。高木さんておもしろいわ~。
もしよろしかったら今日のお昼、ご一緒できないかしら~。
ちょっとお話がありますの~」


うおおおおおお! ご一緒できます! なんのお話ですかっ!?

もしかして俺達の将来のこと……?

「アホか」

「では、四限目が終わりましたら学食でよろしいかしら~」

「よろしいです~」


[第三章・俺の女神ちゃん -3]へ、つづく

↓1日1回ポチッとよろしく。励みになりますです。
 
PR
この記事にコメントする







  Vodafone絵文字入力用パレット表示ボタン i-mode絵文字入力用パレット表示ボタン Ezweb絵文字入力用パレット表示ボタン

この記事へのトラックバック




ごあいさつ
稀人舎ロゴ
個人で出版活動をしている[稀人舎](キジンシャ)と、申します。
「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
好評なものは、「引き出し」から出して、本にすることもあるかもしれません。

ここに公開している創作物の著作権・出版権等の権利は、その作品の著者にあるものとします。
無断転用はおやめください。
なにかにご紹介いただけるときなどは、
[稀人舎]まで、ご連絡ください。
よろしくお願いします。
あ、リンクはフリーでございます。何卒よろしくお願いいたします。
最新コメント
[04/28 ゆっきー]
[11/18 管理人]
[11/17 ちあき]
[02/15 管理人]
[02/15 ちあき]
稀人舎の本
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
シングルマザーとシングルファーザーの結婚は、問題山積みで… 家族も自分たちも幸せになるために、彼らが取った方法は…?

飲んだくれてふる里
飲んだくれてふる里
山形県鶴岡市の思い出エッセイ集。鶴岡の飲み屋で拾った、ちょっと懐かしい話がいっぱいです。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
アクセス解析

AdminControlMenu: AdminMenu | NewEntry | EditComment | EditTrackback

忍者ブログ [PR]