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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第七章・俺ってナニモノ? -7

いくらなんでも黙ってられなくなって、俺は話に割り込んだ。
ええ、割り込ませていただきますよ。

「それ、俺らの明日の朝めしだろっ。そりゃもともとサギリの持ってたもんだけどさ。俺も一緒にそのナントカってとこについてこいってんなら、俺にもちょっとは言う権利あんじゃねえの? 朝めしくらいは残しといてくれよっ! 山姥の錦とかが、どんないいもんか知んないけど、布は食えねえだろがよ」

「うわ、ちょっとスサノオ。あんたは黙ってて! 山姥の錦と交換するって、この意味わかってないの? スサノオー!」

え? 俺、なんかまずいこと言っちゃった? 
山姥の錦と交換する意味って、そんなの知らないよ。 

サギリは大あわてにあわてて、
「差しあげますからっ。全部、これ全部差しあげますからー」
と叫びながら、
手に持った袋を山姥の胸元に、ぎゅうぎゅう押しつけている。

山姥は、そんなサギリをうるさそうに押しやると、
皺だらけの顔を俺に向けた。

にたーり。

こわい、こわいですよ。奥様ー。

「ほ。おぬし、スサノオというのかえ?」

はい。

「ほほほほ。スサノオ、スサノオとな? ほほ。
おぬしがスサノオ、のう」


また、名前連呼だよ。俺の名前って、こっちでは大人気みたい。
また人違いなんじゃねえの? 十中八九、親父のことだろ?

山姥は、スサノオスサノオとなんだか嬉しそうに言いながら、
俺のことをじろじろ眺めまわしている。

なんなんだよう。一体ようう。

「おぬしのことをさがしておるやつらがいるぞえ。気付いておるかや?」

お? 十中八九じゃなくて一、二の方だったか?
「スーサーノーオー」って、あれのことですかね?
で、やつら? 複数形ですかっ!? 
俺をさがしてるのはチームなんですかっっ!?

「わらわにもやつらのことは、よくわからぬのじゃ。ただ、ここ何日か『スサノオー』『スサノオー』とうるそうての。よほど自分らの陣へ取り込みたいとみえる」

はあ。うるさかったですか。
あっちの世界の俺にも聞こえたくらいですからね。

「なんで俺、さがされてんですかね?」

「さあて。わからぬのう。それはおぬしがナニモノかということによるのではないかえ?」

ナニモノかって、十九歳男子、大学生以外になんか必要なんですか?
そんなん自分でもわかりませんよ。

「俺は別に普通の学生ですけどー、なんか他にあるんすか? 知ってんなら教えてくださいよ」

山姥は、ニタニタ笑いを引っ込めて、真面目な顔で俺をじっと見ている。
なんか、そうしてると、
若い頃は相当な美人だったんじゃないかって、思えてきましたよ。
こう~、大奥って感じ? 不気味とか言って、すんませんでしたー!

「ふむ。まだ自分がナニモノか、わかっておらんとな。よい。よいのう。それはよい」

なんだかひとりで納得すると、手に持った反物の端に歯を当てて、
いきなりピーッと引き裂いた。

「これはな、わらわからの贈り物じゃ。大事にするがよいぞ」

十センチほどの幅に裂いた布の切れ端を、
勝手に俺の胸ポケットにぎゅうぎゅう押し込める。
そして、自分の手に残った反物を急に興味を失ったように見やると、
ポンとサギリの手の食料袋の上に乗せた。

「これは、そなたにやろうぞ」

「え? じゃ、じゃあ、これを」

袋を差し出そうとするサギリを、すいっと優雅に手をあげて黙らせる。

なんか、かっこいいんですけどー。

「対価はいらぬ。このスサノオとわらわが今、この状態で、会えたということがその錦の対価じゃ。明日の朝には、このオロカモノに腹一杯食べさせてやるがよい」

それだけ言うと、山姥はするっと大岩からすべりおりた。

「ちょ、ちょっとー。全然わかんないんですけどー。俺ってなんなんすかー? 教えてくださいよー!」

あわてて叫んだけど、暗い河原のどこに行ったのか、
山姥の姿はもう見えなかった。

「自分でわからねば、意味はないぞよ」

そんな言葉とほけほけ笑う声が、川の音に混じって聞こえてきた。

そんなこと言われてもー。

取り残された俺とサギリは、しばらくの間ぽかんと顔を見合わせていた。

「スサノオって、ナニモノ?」

サギリが反物を抱えたまま、つぶやく。

「さあ……」

わかりません。全然。

「オロカモノ?」

それは今、痛感しております。



[第八章・トリカミノサト -1]へ、つづく

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