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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
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第七章・俺ってナニモノ? -4

「あたしの母ちゃんのヒルメはさ、あたしが四歳のときに死んだって、ずっとそう聞かされてたんだけどさ。この間、父ちゃんのネサクが死んで、その葬式のときにね、ネサクの幽霊が『ヒルメは生きているぞ』って言ってくれちゃってさー。なんかその頃サトの中でもいろいろヘンなことが続いたりして、ヒルメがもし生きてるなら、なんか知ってるのかも、とかみんな言い出しちゃって。そうしたら、さがしにいくのはやっぱ娘のあたししかいないじゃん? あたし、今までサトから出たことなかったから、ほんとはやだったんだけど、妹や弟のこともあって、やっぱ行かなくちゃダメかーって」

えーと、え───と。

どっから突っ込んだらいーんでしょうかー……。

「幽霊って……。お父さんの幽霊が出たの?」

あー、なんか一番どうでもいいところから
突っ込んじゃったような気がするけど。

「え? 死んだら幽霊になるじゃん。スサノオのとこは違うの? 死んだ人は幽霊になって自分の祖先の霊たちと一緒になるでしょ。死んですぐだとまだ人の形でみんなに見えるから、いろんなことを言ったりもできるし。まあだんだん他の昔の霊たちと渾然一体になっちゃって、誰が誰だかわかんなくなるからね。そしたら全部で祖先の霊ってことでひとまとめにされるけど。でも、それぞれの気の強さみたいなもんが関係すんのかも。あたしのおばあちゃんのカヤノなんか、死んで三年たった今でも生きてたときの姿で出てくるよ。双子の妹と弟の面倒見に」

「幽霊も生きてる人とおんなじってこと? それってややこしくねえ? バケモノとかと違って普通の人にも見えちゃうってことだろ?」

「うんー。そだねー。幽霊は誰でも見えるよ。祖先の霊と一体化しちゃったら普通の人には見えなくなるけど。ややこしくなんかないよ。なんとなく、あ、幽霊だなーってわかるし。ああ、まだ死んで間もなくて、その人の気持ちみたいなもんが残ってると、普通の人にも見えて、そうじゃなくていろんなそこらにある自然の気とかと溶け合っちゃったりしちゃうと、あたしらみたいなのにしか見えなくなるのかもね。死んでしばらくすると、シナツヒコとかワカサヒコとかと同じモノになるってことなのかも」

「ふーん。死んだら神様になるってことかー。そういう考え方だったら、俺らの世界にもあるかも。でも、幽霊はあんまいないなー。ってか、幽霊が出たってったら大騒ぎでさー。だいたいこの世に恨みを残して死んじゃった人とかだったりするから、なんか恨んでんのかって、お祓いとかしたり……」

「幽霊は人なんだから、祓ってもどうしようもないじゃん。恨んでるったって、幽霊なんだから、もうなんもできないし。幽霊と山の気みたいな霊とかと、ごっちゃになってんじゃないの?」

はあ、そうかも。

「でもねー。サトの掟で、幽霊になっちゃった人の言うことを信じるなってのがあってさ。まあ、だから幽霊はなんもできないってことになるんだろうけどさ。ネサクは幽霊になってから、ヒルメが死んでなくて生きてるなんて教えてくれちゃったもんだからさー。それを信じてさがしにいくのはどうなのかって、もー、サトの長老たちは大騒ぎだよ。おかげであたしは掟破りのハチブってことで、とりあえずサトを出てこないといけなくてさー。ヒルメをさがしてこれなかったら、そのままハチブでサトの中には入れてもらえないんだよ。困っちゃうよね」

困っちゃうよねって。
そんな他人事みたいに言ってますけどね。

それ、大変じゃないですか?

ハチブってのは、いわゆるひとつの村八分ってことですよね?
その、サトに入れてもらえなかったらどーなるんすか?
自分の家に帰れないってことなんじゃないすか?

「どーすんだよ。見つかんなかったら」

「んー、見つからないって気はしないんだよね。なんとかなるかなーって」

ポジティブシンキング。

見習いたいもんですな。少しわけてください。

「で、おまえの母ちゃんてナニモノ? その、長老たちも、掟破りだけど、でも母ちゃんをさがしてほしいって言ってるってことだろ?」

「うん。あたしんちはカムナギの家なんだ」

あら? なんか誇らしげ? ちょっと胸張っちゃったりしてー。

「カムナギって、なに?」

「あ、カムナギ知らないのかー。スサノオの世界にはいないの? スサノオもバケモノとかシナツヒコたちが見えたりすんだから、カムナギなんじゃないの?」

あ、がっかりさせちゃった。ごめんよ。

「いやー。俺はただの大学生。普通の十九歳だよ。カムナギって、どんな字ぃ書くんだよ」

「字? えー、知らなーい。カムナギはカムナギだよー。カムナギの家ってのがサトにひとつあってさ、その血筋ってのがあるわけよ。まー、あたしはアシワラノヤチから出たことなかったから、よそでもおんなじかどうかは知んないけどさ。カムナギの血筋の人間は、神様たちと話したり、バケモノ浄化したりとか、普通の人間にはできないことができるから、サトの中ではちょっと特別っていうかー。春と秋の祭のときは、その年の天気の予言して田んぼや畑のことであーしろこーしろ言ったりとかさ。そーゆーことって、いろんな神様たちと話してると、今年の雨はどんなかなーとか、暑いのか寒いのか、とかなんとなくわかるじゃん? それをもったいつけて言うだけなんだけどね」

あー、カムナギって「巫」かな?
「かんなぎ」って読む。
祭祀を司る人とか機関のことだな。
なーるほどー。
こっちでは、バケモノ見知能力のある人間は、
そういう役割を与えられて、
それなりにみんなに認められてるってことか。
それって、ちょっといいかも。

「で、そのカムナギだったってこと? サギリの母ちゃん」

「そう、ヒルメはもうもう、すっごいカムナギだったんだって。毎年の天気のこととか、はずれたことなんかなくって、結界張る力もすごかったから、バケモノも全然悪さできなくって。ヒルメがいたころは、ほんっとにサトは平和だったよねー、ってみんな言うんだよ。あたしはあんま、はっきり覚えてないけどさ。なんせ四歳のときに死んだって言われてて、ずっといなかったからさ。サトのみんなも死んだって思ってたから、死んじゃったんならしょうがないなー、娘に、あ、あたしのことね、に期待~とか思ってたんだろうけど。生きてるって言われたら、やっぱヒルメの方が全然いいに決まってんじゃん? んで、さがしにいけーって」

「えー? それって、なんかおもしろくなくない? おまえ、すげー強ええじゃん。あんな大量のバケモノ相手に戦えるし、結界も強力だし」

「強くないよ全然。ネサクにはまだまだだって、ずっと言われてたよ。うちのサトでは、だいたい十五か十六歳くらいでみんな成人すんだけどさ。あたしも成人したらカムナギになるんだって言われてたんだけど、ほら、まだ全然ヒメミコ様らしくないしー。あ、女のカムナギはヒメミコ様って呼ばれるんだけどさ。こう~、きれいな衣装着たりして、結構みんなのあこがれだったりもするんだよね。ヒルメはすごい美人だったらしいしさー。それよりも、あたしよかスサノオの方が強いでしょ。山ん中でやった浄化のハライゴト、すごかったじゃんー。あたしの結界は消えちゃってたけど、スサノオの結界は小さいけど効いてたわけだし」

うへー。なんかほめほめ合戦になっちゃったよー。かゆいなあ。

「いや、あれまぐれだから、俺もあんなすごいのできたの初めてだし」

「そうなん?」

「そう」

がっかりさせてすいませんね。
なんか、がっかりさせてばっかだな。



[第七章・俺ってナニモノ? -5]へ、つづく

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