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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
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第七章・俺ってナニモノ? -3

薄闇に慣れた目にはビックリするような光量で、灯りが点いた。

「うわ、うわ、うわ────。
なんだよなんだよなんだよ。
それ────!!」


驚いたサギリが岩の上から転がり落ちそうになって、俺はあわてて腕をつかむ。

「俺のいた世界から持ってきた灯りだよ。今まで持ってたこと、忘れてた」

「そんなん持ってたんなら、もっと先に行けたじゃん」

俺も、ちょっとそんなん思ったんですけどね。
でも、これって単二電池が二個くらいしか入ってない大きさだし、
この光量からして、点けっぱにしたら、
たぶん一時間くらいしかもたないんじゃないんですかね?
どのくらい電池が残っているのかも、わからないし。
途中で、それこそ真っ暗になるのは避けたいしなあ。

「う──ん。これはさー、この光の元のエネルギーってか力がさ、この部分に入ってんだけど、これは光が点いてるとどんどん減っちゃうわけね。たぶんそんなに長いこと点けてられないと思うから、やっぱたき火した方がいいと思うよ。ほら、今手許を明るくする間くらいなら大丈夫だから」

「へえ──。そうなんだー。油の灯りみたいなもんかー」

そうそう。この世界にも灯油ってのはあるのか。異文化交流会。

懐中電灯で手許を照らしてやっていると、
サギリは荷物の中から取り出した火打ち石となにやら細々した道具でもって、
すぐに火を熾した。

すげー。サバイバルー。

たき火が安定して燃えるようになったんで、
俺は懐中電灯をまた尻ポケットに突っ込む。
今度は忘れないようにしようっと。

サギリはまた荷物をごそごそやって、俺に黒い物と白っぽい丸い物を手渡してきた。

「干し肉と木の実の焼いたやつ。こうやって少し火にあぶって食べると、まあまあおいしいよ」

サギリは帯にさげていた小振りな鉈のような刃物で木の枝の先を少し割ると、
それに丸いのを挟んで火にかざした。
へえー。
腕白でもいい、たくましく育ってほしい。

干し肉はかたかったけど、かみしめていると味が出てきておいしかった。
ビーフジャーキーって感じ? 牛じゃないだろうけどな。
木の実の焼いたのってのは、微妙~。
なんかの実を砕いて焼き固めたクッキーみたいなもんなんだけど、
甘いかしょっぱいかどっちかにしてくれーっていう、インパクトのない味。
でも、贅沢は言いません。空腹は最高の調味料でございますよ。

もっと食べたかったけど、「あとは明日の朝の分」と言って、
サギリは袋の口を閉じてしまった。
うえーん。でも、まあしょうがない。食料は大切にしなきゃね。
今度こっちに来るときは、
チョコレートとキャラメルとカロリーメイトを持ってこよう。

……あー、また来ることがあるとしての話だけどね。

「さっきさ、あのさ、山の中で助けてくれて、あのさ、ありがと、ね……」

サギリがたき火の火を見て膝を抱えながら、ぽそぽそと言う。

ん~~? 「ありがと」が小さくて聞こえませんよー。

なんてことは言わずに、黙ってうなずいてやった。俺っていいやつー。

このサギリって女の子は、
人に「ありがとう」を言うのに慣れてないタイプなんだね、たぶん。
たまにそういうやつっているよな。
小さい頃から、なんでもひとりでやるしかないような境遇だったやつに、
多いと思う。

うんうん、なんだか知らんが苦労したんだねえ~。 
お兄さんになんでも言ってごらん~。 

「あの山の中のバケモノ、あんなに近くにくるまで、なんで気が付かなかったんだろ。結界も張ってたのに、いつのまにか効いてなかったし」

「あれじゃねえか。山ん中って音がずーっと繰り返してて、なんかぼーっとする感じがするじゃん? それで感覚が鈍ったんじゃねーの?」

今聞こえている川の音も一種の催眠効果があるみたいな気がするけど、
山の中は閉鎖的な分、効果が高いんじゃないだろか。

「あ、そうかー。ここの山の神たちに邪魔されたのかもなー。あたしたち、よそ者だから」

「山の神?」

それは、こわーい奥さんのこと、じゃないんですよね。きっと。

「うん……。神ってほどはっきりしたもんじゃないなー。山の中って、いろいろ密度が高いから、木とか草とか土とか石とか小さい動物とか、いろんなもののそれぞれの気みたいなもんが、ごちゃーっと集まっちゃっててさ。全体で、今山に入ってきたやつらってなんか気にいらねーとか思っちゃうっていうか、感じちゃったりして、そうすると、あたしたちの力を弱めるような、なにか働きをしたりするんだよね。その木とか草とかの気が集まって強くなって、姿が見えるようになると、神様ってことになるんだと思うけど。あ、まあ、見えるのはあたしたちみたいなカムナギとかだけだけどね。そうなるとちゃんと話もできるから、助けてもらったりもできるんだけど、形になれないような気の集まりだと、どうしようもないんだよね。バケモノの親戚みたいなもんだったりもするし。あたしもこんな深い山に入ったのって初めてだし、自分がよそ者だってことも忘れてたから……。こんなに、ここの山の気が強いと思わなかったんだ。危ない目に遭わせて、ごめんね。スサノオ」

また、「ごめんね」が小さい声になった。

うんうん、聞こえてますよー。よしよし。

なんだか、サギリの頭をぐりぐり撫でたくなったけど、やめておいた。
怒りそうな気がするし。

それよりも、よそ者って……。

「あのさ、お前とジヌミは旅してるって言ってたけど、どっからきたんだよ? 遠く?」

「そんな遠くないよ。この山は、北から南に長い大きい山の一部なんだけどさ。その大きい山の向こう。東側。アシワラノヤチってとこ。あたしはアシワラノヤチノサトっていうアシワラノヤチの中で一番大きいサトから来たんだけど、ジヌミはそのアシワラノヤチの海沿いにあるミナカタノミナトっていう港町にいたんだ。あたしはサトを出て、まずミナカタノミナトでおばさんのアキヅに会おうと思って行ったら、そこにジヌミがいてさ。従兄弟なんだけど、会うのはそんとき初めてで、いろいろ話したら、ジヌミも父ちゃんさがしに行きたいから一緒に行くってことになって、その港から船に乗ったんだよ。西に行くなら、高い山越えるよりも、船で岬まわった方が早いし楽だからって。でも、海の上でいろいろあって、もうすぐ着くってころに船が沈んじゃってさ」

あらま、遭難? そうなんだー。

「ふーん。ジヌミは父ちゃんさがしてんのはわかったけど、おまえは? サギリはなんで旅に出たんだよ」

十四歳ってったら、まだ親元でほけほけしてる年齢でしょうが。
まあ、こっちの世界の事情はわかんないけどね。
サギリの見た目なんか、いかにもまだ子供だし。
冒険の旅に出るったって、まだ早いんでないの? 
あーでも、魔女の独り立ちも十四歳だったか。
しかし、なんであの主題歌はルージュの伝言だったんだろう……?

「あたしは、母ちゃんのヒルメをさがしに……」

は?

えーと。サギリは母ちゃんをさがしに。
んでもって途中からパーティに加わったジヌミは父ちゃんをさがしに。
で、さらに新しいメンバーの俺は親父をさがしに、と。

みーんな、
父ちゃん母ちゃん訪ねて三千里ですか?


自分さがしの旅じゃなくて、親さがしの旅? 

どうなってんの? この話。



[第七章・俺ってナニモノ? -4]へ、つづく

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「稀人」の訓読みは「マレビト」
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