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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
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「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
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第一章・俺を呼ぶ声 -6

通り過ぎてきた後ろには、やっぱり誰もいない。
さわやかな風が、無人の小径を吹き抜けてゆく。
上を見ても、そこには路の両側に植えられた桜の木の枝が葉を茂らせ、
緑のトンネルをつくっているだけだ。

ああ、木漏れ日がまぶしいわー。 

前方五メートルほどの曲がり角には、女子が三名立ち話中。
三名中二名がヘソ出し。一名がミニスカ。

夏ってイイネ! まぶしいネ! 

身のまわりどこを見ても、平和な光景だ。
俺をいじめようって誰かが隠れてるなんてこたあないだろネ。
そんな暇なことをしようって大学生は、いないだろうなあ。
いないといいなあ。
小学生じゃないんだから、そんなんいたらキモイもんなあ。

そんなキモイ人間じゃなく、
バケモノの姿も気配も、今のところ近くにはない。
あのバケモノさんたちは、俺の名前を呼ぶなんて
フレンドリーなことをしたことはない。
やつらは、俺が誰かなんて頓着してない、と思う。
自分たちの存在を関知できる相手なら、誰でもいいんじゃないだろうか。
普段誰にも見てもらえないもんだから、たまに見える人間がいると、
嬉しくなって襲ってきちゃうんだ。きっとそうだ。
やつらの「ぐおえあお~~~~~!!」の呻き声は、
「あーそーぼー」なんだ。

もう~、寂しがり屋さんなんだから~。 

感情表現が下手なんだな、あと力の加減がわからないんだ、きっと。
きっとそうだ……。

…………んなわけあるか────! 

「スサノーオ──オー」 

まだ、聞こえる。しつこいよ。
これは、夢じゃないよな……。
古典的作法にのっとって、ほっぺたをつねってみたけど、
目は覚めなかった。

じゃなくてー、俺は寝てません! 

普通は見えないバケモノが見えたり、気配を感じたり、
夢かうつつかわからねえ毎日を送ってる俺だけど、
自分が寝てるか起きてるかくらいはわかる。
わかる、と思うよ。

たぶん。 
おそらく。 

このわけのわからん状況で、俺のできることといえば……。

「やえがきっ」 

かしわ手を打って、念のための結界を張り直す。
だって、これくらいしか思いつかねえんだもんよ。


ピイイイ────ンと空気が鳴って、
その一瞬あとに、俺のまわりが歪んだ。



[第一章・俺を呼ぶ声 -7]へ、つづく

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このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
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