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マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

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第一章・俺を呼ぶ声 -2

「呼びませんよお。だって、スサノオったらゆうべ『寝坊するー朝めしパスー』なんて、かわいくなーく答えてたじゃないのー。ほんと、男の子っていやーね。大きくなると口をきかなくなるって、本当だったんだわー。小さいころはかわいかったのにー。あんまりお母さんに冷たくすると、許さなくってよ

あーはいはい。

「許さなくってよ」

ったって、どうするおつもりですか?
もう俺はお母さんより、
二十センチも背が高くなっちゃったんですけどー。


「う────」

熱いシャワーを頭から浴びると、自動的に口から声が出た。う───。

しばらくそのままで、眠気をお湯とともに排水口に流してから、
がしがし頭を洗う。
家は古いけど、この風呂場とキッチンは、
十年前まだ親父がいたころに、最新の設備に作りかえてある。

ありがとうありがとう、オトウサン! 

そうでなかったら、あのお嬢様育ちのおふくろのことだ。
おふくろが生まれる前に取り付けたという、
古ーい給湯設備のまま今も使い続けていたに違いない。
なんせ、よその家のことも世間のこともほとんど知らない箱入り娘が、
そのまま奥様になった人なんだから。

ボタンひとつで自動的にお風呂が沸き、
キッチンの蛇口からお湯が出るのを見たときの、
おふくろの顔ったらなかった。

「すごいわすごいわー便利ねええ。お湯が出るのよー。ほらほらピッピッピーって、温度の調節もできるんですのよ──」

これが十年前。
このころ、よく遊びに行ってた友達の家では、
当然蛇口からお湯は出てたし、
温度調節のできるシャワーも当たり前だった。


オカアサン、アナタハイッタイ、イツノジダイノ、ヒトデスカ? 

やっぱ、少なくとも親父が帰ってくるまでは、俺がしっかりしないと。
あのおふくろひとりじゃ、どうなるかわかったもんじゃないだろ。

ボク、がんばるよ。 

眠気や汗と一緒にやさぐれた気持ちも洗い流して、
さっぱりした好青年のアイデンティティを取り戻したえらい俺は、
「昨日は少し飲んでたし、疲れてたから、ごめんね」
とおふくろに素直に謝り、
なおかつ自分でコーヒーを煎れて飲んだ。
もちろん、おふくろの分も煎れてあげた。

「スサノオが煎れてくれたコーヒーは、おいしいわー」 

親孝行でござい。


今日の午前中の講義はサボる気満々だったのだけど、
早起き(なんだよっ! 学生にとっては! 九時でもよっ)してしまったので、
三限目からは出ることにした。

コーヒーが残っているうちに、
四枚切りの分厚いトーストにバターをべたべたに塗って食べた。
おふくろは朝ご飯を作ってはくれなかった。

「だあってー、スサノオったら『朝飯パスー』って言ったじゃないのー」

自分の分のゆで卵を食べながら。

ほらね。身のまわり半径五メートル真っ白なおふくろだって、
これくらいの意地悪をして嫌味も言う。
人の黒い気持ちなんて、最初はこんな小さなもんなんだ。
これが普通ならそこらの邪悪な気配をほんの少し呼んでしまう。
そういうもんなんだけど。

オカアサンは、真っ白。
なにをしても、真っ白。う────ん。

「今日も遅くなるの?」

「んー。晩ご飯には帰るつもりだけど」

玄関で靴を履く俺の背中に母の心細げな声が降りかかる。
ああ……、これが同棲中の恋人の言葉だったら、
サイコーなんですけどねっ。

「最近、スサノオったらあんまりおうちにいてくれなくって、お母さん、さみしいわ」

ああ、これが同棲中の…(以下同文)。
いや、俺もね、できることなら、
真っ白体質のお母さんのそばに一日中貼り付いていたいんですよ。
なにも好きこのんで、真っ黒バケモノの跋扈する、
外の世界に行きたいわけじゃないんですけどね。
ガキの頃みたいにお母さんのスカートの裾ひっつかんで、
くっついていりゃあ安全安心なんだから。

でもそれ、十九歳男子としておかしいからっ! 
そんなんじゃあ、マザコンの引きこもりゃーだからっ!! 
俺は普通人なんだから、あくまでもっっ! 
普通の男女交際だってしたいし、普通の青春謳歌したいんですよ。 
普通の、普通による、普通のための、 
普通の俺の人生なんじゃああああ!! 

いつまでもお母さんのスカートのカゲに
隠れてるわけにゃあいかんのですわー。
だからがんばって、今日も怖いお外に出かけてくるのです。
ああ、自分の普通感覚が憎い。

「アホか、お前は」

親父の冷たい声が聞こえた気がした。
はいはい、アホですよ。
七年間行方不明の人に、そんなん言われたかないですねーだ。
だいたいそんなん言うなら、
俺の目指す方向示してからいなくなってほしかったですねっ!
 俺は俺なりにいろいろ考えてんだ。
考えたあげくの、この悩みなんだ。



[第一章・俺を呼ぶ声 -3]へ、つづく

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