忍者ブログ

マレビトの引き出し

[稀人舎]読み物コーナーです。 和風ファンタジー連載中。

お知らせ
「素戔鳴流離譚・其ノ二」(すさのおりゅうりたん・そのに)、連載開始!
最新号はこちら→第六章・アシワラノヤチノサト-33   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです

「葦原を流れゆくモノたち・其ノ一」は完結しました。
最終回はこちら→[第八章・西のホラ -47]   最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらです。

「素戔鳴流離譚・其ノ一」(すさのおりゅうりたん・そのいち)は、完結しました。
最終回は、こちらです。→[終章 -15]  最初からお読みくださる方はあらすじから。 目次一覧はこちらからどうぞ。

 ←ランキング参加しています。上位に食い込めたら、こいつも有名ブログの仲間入りっ!?
よろしくです。(涙目)

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

第一章・俺を呼ぶ声 -1

「スサノオ、スサノオ……」
 
なんだか遠くから、俺を呼ぶ声がする。
そっちに行かなくちゃと思うけど、身体が思うように動かない。
だいたい、そっちって、どっち?

「スサノオ──、スサノオーオ──オ……」

闇の中から聞こえてくる声は、妙な具合に反響して、方向が定まらない。

行くから……今、行くから。待ってて。待って……。 

でも身体が動かない。
俺の視力を奪っている完璧な闇は、
まるで物質的な重さを持っているように俺の身体も包み込んで、
柔らかく、でも断固としてその動きを封じていて、
指も動かせず声も出ない。

「その闇はお前の心の中にある迷いに他ならんのじゃ。考えてもしょうもないときもある。まず動くことじゃ。襲ってくるからやっつける、怖いから攻撃する、でいいんじゃがのー」

闇を切り裂くように鮮明な言葉が届く。

親父!? 俺を呼んでいるのは親父? どこにいるんだよっ! 

「スサノオー……」

また、不鮮明な呼び声に変わる。
親父の声のような気もするし、違うような気もする。
声の主の元へたどり着ければわかるはず。
でも、身体はあいかわらず動かない。

行かなくちゃ。今、行くから……。 

「スサノオ────オ───オ………」


「わーったよっっ 今行くっつってんだろっ!!
 ちょっと待ってろ、うっせー……

やっと声が出たと思ったら、自分の叫び声に驚いて目が覚めた。

……夢かよ。
夢オチとは芸がないぜ。誰だか知んないけどさ。
おかげで寝起き最悪。汗びっしょり。
あ── 気持ち悪。
枕元の充電器に突き刺した携帯を見ると、まだ九時だ。

くっそ───。 

今日は昼まで寝てやろうと思ってたのに。
二度寝しようと目をつぶっても、もう寝られねー。
だいたいさー、この部屋は陽当たりよすぎ。
そんでもって、カーテン薄すぎっ。
七月も半ばの太陽は、
早くも室温を真夏日並みにまで上昇させようとしている。

ぐも──。 

そして、この古い家にクーラーなんて小洒落たものは、
ひとっつもないっ!
求む、文明の利器。

あきらめた俺は、渋々ベッドから身体を引き剥がすと、
着替えを持って部屋を出た。
陽の当たらない廊下は、室内と違ってひんやりした空気に満ちている。
幅広の階段をおりると、一階はさらにひんやり。
うちにクーラーを導入しようという話がいつも立ち消えになるのは、
この「ひんやり」のせいだ。
天井の高い古い家の特権だけど、
やたらとでかい和洋折衷のこの家を、
近所のガキどもは「幽霊屋敷」と呼んでるのを俺は知っている。
…てか、俺の同級生たちも言ってたし。
おふくろの同級生も、言ってたに違いない。

高い室温と悪夢のダブルパンチでイヤーな汗まみれの俺は、
幽霊屋敷の「ひんやり」に急速に体温を吸い取られて、
でかいくしゃみをした。

「あらスサノオ。今朝は寝坊するんじゃなかったのかしら~」

俺のくしゃみを聞きつけて、奥のリビングからおふくろが顔を出す。

ああ、今日もオカアサンのまわりは真っ白だー。

「目、覚めちゃって。シャワー使っていい?」

「いいわよー」

「あ、あのさ。お母さん、さっき俺のこと、呼んだ?」

ふと思いついて聞いてみる。
さっきの悪夢は、階下からおふくろが「スサノオー」と呼んだ声が、
もしや夢の中に入り込んできたせいじゃないかと思ったんだけどね。



[第一章・俺を呼ぶ声 -2]へ、つづく

↓1日1回ポチッとよろしく。励みになりますです。
 
PR
この記事にコメントする







  Vodafone絵文字入力用パレット表示ボタン i-mode絵文字入力用パレット表示ボタン Ezweb絵文字入力用パレット表示ボタン

この記事へのトラックバック




ごあいさつ
稀人舎ロゴ
個人で出版活動をしている[稀人舎](キジンシャ)と、申します。
「稀人」の訓読みは「マレビト」
つまり、「マレビト」とは、[稀人舎]を運営している者のことです。
このブログは、まだ本になっていない作品を入れておく場所……「引き出し」です。
お読みになられましたら、ぜひご意見・ご感想をお寄せください。
好評なものは、「引き出し」から出して、本にすることもあるかもしれません。

ここに公開している創作物の著作権・出版権等の権利は、その作品の著者にあるものとします。
無断転用はおやめください。
なにかにご紹介いただけるときなどは、
[稀人舎]まで、ご連絡ください。
よろしくお願いします。
あ、リンクはフリーでございます。何卒よろしくお願いいたします。
最新コメント
[04/28 ゆっきー]
[11/18 管理人]
[11/17 ちあき]
[02/15 管理人]
[02/15 ちあき]
稀人舎の本
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
未入籍別居婚~私の結婚スタイル~
シングルマザーとシングルファーザーの結婚は、問題山積みで… 家族も自分たちも幸せになるために、彼らが取った方法は…?

飲んだくれてふる里
飲んだくれてふる里
山形県鶴岡市の思い出エッセイ集。鶴岡の飲み屋で拾った、ちょっと懐かしい話がいっぱいです。
ブログ内検索
バーコード
最新トラックバック
アクセス解析

AdminControlMenu: AdminMenu | NewEntry | EditComment | EditTrackback

忍者ブログ [PR]